NHK受信料がテレビ業界を消滅させる

6月29日のヤフーニュースに「NHK受信契約が4年で100万件減」という読売オンラインの記事が掲載されていました。これは2023年度のNHK決算を分析した中で読売新聞の記者が注目した事実のようです。

2023年度のNHK決算によると、一般企業の売上高に当たる事業収入は前年度比433億円減の6,531億円。事業支出は同34億円減の6,668億円で、差し引き136億円の赤字になっています。これは1989年度以来34ぶりということです。これは昨年10月に過去最大幅となる受信料1割値下げことで、受信料収入が6,328億円と、同396億円減少したことが最大の原因だとしています(実際には事業支出の中に781億円の現金支出を伴わない費用(減価償却費)が含まれており、現金ベースで見れば644億円の黒字であることは、7月2日のブログに書いた)。

更に記者は、中長期的に見て懸念すべき事項として、受信契約件数を挙げています。これは昨年度末時点で4,107万件であり、2019年度末の契約総数4,212万件と比べると4年で100万件以上減少していることに注目しています。契約対象数自体(テレビ受信機を持っている世帯)が4年前より推計86万件減ですから、その差14万件以上はテレビ受信機を廃棄したことによる契約数の減少ということになります。契約総数からすると大したことないように見えますが、ひと月に1万件以上と言うことであり、注目に値する数字です。最近はテレビよりネットと言う若者が増え、テレビは全く見ない若者も増えました。テレビ受信機があればNHK受信料を払わされることから、これらの若者がテレビを手放していることが予想されます。若者にとってスマホは必須であり、通信料が高いことからほかの費用を減らす必要があり、NHK受信料がターゲットになってきているようです。この傾向は今後増大すると思われ、高齢人口の減少と相まってテレビ受信機の減少は続くことになります。

これにより大きな影響を受けるのは、民放とテレビメーカーです。この記事ではNHKの契約総数が減ることを問題にしていますが、NHKの受診料収入はなお約6,000億円と民放キー局全社の放送売上高くらいあることから、経営上全く問題ありません。しかし民放はテレビの減少がスポンサー収入の減少に直結し、NHKとは比べ物にならないくらい厳しい経営状況となります。それ以上に深刻なのがテレビメーカーです。以前日本のテレビメーカーは海外市場でテレビを売りまくっていましたが、今では中国、韓国のメーカーに追い出されて、国内が唯一の市場になっています。それも買い替え期間が長期化し、人口も減少に転じていますので、市場は縮小しています。さらにテレビチューナーのない海外製の安いテレビの販売も増えており、このままでは将来的にテレビ製造事業は成り立たないとして撤退を決断するメーカーも出てくると思われます。半導体ではありませんが、いったんテレビを製造するメーカーがなくなると海外から輸入するしかなくなり、販売価格が上昇します。これがまたテレビの減少に繋がり、最終的にはテレビがなくなることにつながります。

これを加速しているのがNHK受信料であり、民放やテレビメーカーはNHK受信料の廃止を強力に働きかける必要があります。NHKが受信料制度の手本にした英国では2027年限りでBBC受信料が廃止される予定ですし、フランスでは2022年4月にマクロン大統領が公共放送税の廃止を大統領選挙の公約に掲げ、当選後廃止しました。このように世界の流れとしては、公共放送の受信料制度は廃止される方向にあり、NHK受信料の廃止も時間の問題です。