熊本の高校は漢文に代えて中国語を

TSMCの第一工場が完成し、第二工場も着工した結果、熊本と台湾との交流が盛んになっています。経済的交流から文化芸術や学生の交流まで広がっています。この中で私が注目しているのは、台湾の大学が熊本の高校生に台湾の大学への留学を熱心に働きかけていることです。台湾の難関大学である国立清華大は熊本市で留学説明会を開催し、同雲林科技大学は4年間の授業料無償、月5万円の奨学金給付と言う破格の条件を売りにして高校回りをしているようです。雲林科技大学はTSMCと提携し半導体系学部を設けているとのことですから、熊本大学の半導体系学部で養成する人数ではTSMCに必要な要員を確保できないと判断しているように思えます。さらにTSMCがある台湾の新竹サイエンスパーク近くにキャンバスを置き、TSMCと産学連携を進めている国立交通陽明大学は、熊本大学と連携に関するMOUを締結し、相互に研究室を設置する、単位の相互認定を検討するなど一体化を進めており、熊本の高校生の魅力的な(留学と言うより)進学先になってきています。これらにより10年もたてば熊本の高校生が多数台湾の大学に進学するようになっていると思われます。TSMCやシャープを買収した鴻海を見ると技術的に日本企業を凌駕している台湾企業も多く、先端技術を学ぶには日本の大学より台湾の大学の方が有益とも言えますし、学費が日本より安い(年間25~45万円程度)のも魅力です。そのため熊本では今後台湾の大学に進学する高校生の数は増えると予想されますが、これを後押しするため熊本県教育委員会としても対応が必要となっています。考えられる対応としては、高校の授業に選択科目として中国語を導入することです。もし漢文(古文)の授業がまだ行われているのなら、漢文に代えて中国語の授業を行うのが良いと考えられます。私も中国語を少し勉強しましたが、中国語の文法を学べば漢文のレ点や返り点なしで漢文を読めるようになります。中国語は主語+動詞+目的語の並びとなっており、英語と同じです。そのため中国語を学べば英語の理解が深まります。また中国語の発音を学べば、日本人が下手と言われる英語のrとlやvとbの発音のコツも掴めます(中国語には有気音と無気音があり、有気音は唇で発音し、無気音は喉の奥で発音する。英語のrやvは無気音に該当し、lとbは有気音に該当するので、発音する場所を意識すればよい)。このように中国語の勉強は英語の勉強に良い影響を与えます。台湾の大学での授業は、中国語か英語の授業となるようですので、台湾の大学に進学するなら高校で中国語の基礎を学んでおくことが不可欠となります。そうなると受験生の負担が増えそうにも思えますが、台湾の大学に進学するなら日本の共通一次試験は受ける必要はないことから、英語・中国語・数学など台湾の大学で学ぶ上で必要な学科だけを勉強すればよく、負担はむしろ少なくなります。そのため教育委員会には、高校の授業の中に中国語コースを設ける、クラブ活動として中国語クラブを作る、中国語教員を配置するなどの施策が求められます。

日本の大学のレベルはどんどん低下していますし、今後授業料値上げが予想されますので、台湾の大学への進学は、熊本の高校生にとって魅力的な選択肢となってきます。また熊本県としても台湾との結びつきを深めるために、県費留学生制度の創設を考えてよいと思われます