熊大半導体プロセス工学課程は5年後一般入試廃止
TSMCの熊本進出に伴って熊本大学(熊大)が開設した工学部半導体プロセス工学課程の入学試験が今年初めて実施されました。入学試験は3年次編入試験(定員20名)、一般入試(15名)に分かれて行われ、これ以外に5名の推薦入学枠があるようです。これを見ると3年次編入試験に重点をおいていることが分かりますが、一般入試の結果を見るとこの方針は正しかったようです。
一般入試の結果を見ると、共通テストの最高点が355点(450点満点)、最低点が298点となっています。最高点は他の学科と同じようなところにあることから、応募者は全国模試の偏差値で熊大工学部(スタディサプリでの偏差値は45~47.5)に割り振られ、その中で半導体プロセス工学課程を選択したものと思われます。これを見ると半導体をやりたくて難関大学ではなく熊大半導体プロセス工学課程を選択した学生はいないと言ってよいと思われます(いれば最高点が突出する)。最低点は他学科より50点程度高いことから、合格者のレベルは他学科より高いということになります。
これを見ると半導体プロセス工学課程が一般入試で優秀な学生を取ることは難しいように思われます。大学が偏差値で格付けされ、普通高校では偏差値に応じていける大学を選ぶ習慣が染みついており、何が何でも半導体をやりたいから熊大半導体プロセス工学課程に行く生徒はいないかも知れません。それもそのはずで、高校普通科で半導体に触れることは殆どないことから、半導体プロセス工学と言ってもイメージが湧きません。TSMC進出で騒いでいるのは熊本だけであり、他県の高校はTSMCなんか知らないと思います。こんな中でこれまでの熊大工学部の枠を超える優秀な生徒が来ることを期待するのは非現実的かも知れません。私は、半導体産業の将来性やTSMCなどが奨学金の支給を考えていることを聞いて、一般入試には相当優秀な生徒が応募すると考え、以前熊大半導体プロセス工学課程は早慶なみに難関化すると予想しましたが、どうも的外れだったようです。まだ入試の工夫で改善する期待もありますが、熊大工学部の全国的評価が低く、正直一般入試で優秀な学生が入学することは諦めた方が良いかも知れません。
そうだとすれば3年次編入生に期待するしかありません。3年次編入生は殆どが高専卒業者だと思われますが、彼らは15歳で将来の職業を選択し、一番知識が身に付く15~20歳までみっちり工学の基礎を学んでいますので、外れは少ないと思われます。現在高専出身者は企業で引っ張りだこであり、大学でも3年次編入を勧誘するところが増えて取り合いになっています。今のままでは熊大工学部半導体プロセス課程での編入生20名の確保も簡単ではないと思われますが、今年から半導体専門課程を設けた高専もあるようなので、5年後にはこれらの生徒が大学に編入することになります。これを捉え熊大半導体プロセス工学課程では、一般入試を廃止し、全員高専からの3年次編入生とすることも考えられます。国立高専は全国に51校あるようなので、1校1名の推薦枠を設けただけでも定員を満たします。一般入試の偏差値が60を超えないようなら決断するときだと思われます。