心臓を壊してでも髪の毛生やしたい?
歳をとると禿や薄毛に悩んでいる人は多いと思います。その人たちの多くが手を出すのが市販の育毛剤や発毛剤です。発毛を謳っているのは第二類医薬品に指定された商品になります。これには医薬品から転用された化合物が配合され、発毛に科学的根拠があります。しかしこれらの化合物は、心臓に働きかけ心拍数を増やす、血管を広げることによって頭皮に多くの血液(栄養)を送り込み発毛を促すため心臓に大きな負担がかかり、心臓が強くない人は心不全(心臓に異常がある状態)になる危険があります。このことを知らずにこれらの発毛剤を使っている人が大部分だと思いますので、注意喚起のため私の経験からこのブログを書きます。
発毛剤と言えば真っ先に出てくるのが大正製薬のリアップ(商品名)です。この効果は発毛治療の医師の間でも認められています。リアップの有効成分はミノキシジルという化学物質ですが、これはもともと降圧剤(血圧を下げる薬)として発売されました。しかし重篤な副作用が見つかったことから発売後まもなくして販売中止となりました。そこで臨床試験中に発見された副作用である増毛作用に注目し、発毛剤として商品化されることとなりました。ミノキシジルは血管を拡張する効果がありますので、頭皮の血管を拡張し、毛母細胞に送られる栄養を増やし、発毛を促すと考えられます。私の場合も使い始めてまもなく髪がなくなった頭皮に産毛が多数生えてきました。ただし、せいぜい1㎝程度までしか伸びず、そこで脱毛発毛のサイクルを繰り返し、太く長くなりませんでした。
同時に血圧を下げる効果もあるので、頭皮に塗布しても血圧が下がります。私は若い頃から血圧が高かった(下が90~、上が140~)のですが、リアップを使い始めたら正常値(下が下が~70,上が~120)になりました。当初リアップの有効成分がもともとは降圧剤に使われていたことを知らず、これがリアップのせいだとは思わなかったのですが、後日このカラクリを知り、髪は生えなくても降圧効果だけでも使う価値があると思いました。これを止めたのは、40代半ばになって健康診断の心電図検査で不整脈が指摘されたからです。ミノキシジルが降圧剤として販売中止になった原因は、動脈と静脈で拡張効果が違う(動脈は広げるけれど、静脈は広げない)ためと言われており、その影響は動脈と静脈が集まる心臓で大きく出ると考えられます。そのため私はこの不整脈はリアップの使用が原因ではないかと考え、使用を中止しました(医師は加齢のためと説明)。その後リアップはミノキシジル濃度が5倍となり、第二類医薬品扱いとなったせいで、薬剤師の承認なしには購入できなくなりました。私も再度購入を試みましたが、薬剤師に「健康診断で不整脈を指摘されことがある」と言ったところ「それでは使用しない方がよいですね」と言って売ってくれませんでした。
次に医学的に発毛効果が認められているのは、第一三共ヘルスケアのカロヤンアポジカΣ(以下アポジカ。第二類医薬品)だと思われます。これの有効成分はカルプロニウム塩化物で、病院で円形脱毛症などの治療に使われているようです。脱毛が進んだ私が次に手を出したのがこのアポジカでした。しかしこれは1週間ほど使用して止めました。先ず強烈な臭いがあり、生理的に体に悪い予感がしましました。それと使用後3日目くらいから咳が出始めました。使用説明書の副作用欄には咳の記載はありませんでしたが、ネットでよく調べると副作用として咳が出る人がいることが分かりました。カルプロニウム塩化物は、血管を拡張する作用があり、肺気道(気管支)の血管も拡張する結果、この血管から組織液が気管支粘膜表面に漏出して付着するため、これを咳で排出しようとするようです。これでは心臓ばかりでなく肺もやられそうなので、使えないのは当然です。
ひよこを使ったCMでお馴染みのニューモ(ニューモの卵由来成分は頭皮保護効果を謳っており発毛効果はない)からこのカルプロニウム塩化物を使った発毛剤ニューZが発売されたようですが、同じような問題があります。副作用にはあまり触れていないようですので、良く知ったうえで使う必要があります。高血圧、不整脈など心臓の異常を指摘されたことがある人は使わない方が良いと思われます。また使う場合は、毎朝の血圧測定(モニタリング)が不可欠です。多くの人で血圧が大きく変動します。
これらの発毛剤は第二類医薬品と表示していますが、これは劇薬指定と考えた方がよいです。毛は生えたけど心臓が壊れたとならないよう注意が必要です。