製造業復権はトランプより日本が目指すべきもの
7月18日米国の共和党大会でトランプ氏が大統領候補に指名されましたが、出てきた政策の中で私が一番驚いたのは、製造業復権を掲げていることです。トランプ氏は不動産業で財を成したことこら、住宅・不動産・金融に強いと思われ、モノづくりには一番関心がないと思っていました。これが製造業の復権を真っ先に掲げたということは、国を強くするために一番必要なことが分かっており、なかなか賢い大統領候補と言えると思います。これは大統領選挙で工場労働者からの得票が重要になるからかも知れませんが、このことからも製造業が国の基盤であることが分かります。
現在の製造業強国は中国であり、中国が今のように豊かになり軍事強国になったのは、世界の輸出基地になったからです。その中国の最大の輸出先が米国であり、その分米国の製造業は衰退しました。そして豊かになった中国に輸出を増やして豊かになったのがドイツや韓国ということになります。日本も中国の製造業の発展によって製造設備や原材料の輸出で利益を得たのは間違いありませんが、輸出品を奪われることにもなりました。この結果製造業が衰退したという面では米国と同じと言えます。
現在では中国でも人件費などの製造コストが上昇し、輸出は厳しくなったと言われていますが、輸出基地が東南アジアに移転しただけで米国や日本で製造すると言う大きな流れにはなっていません。その結果、日本の場合3割程度の円安になって輸出競争力は上がったはずなのに、輸出する物がない状態です。このままでは円安は多くの国民にとって、輸入物価の値上がりで生活が苦しくなるだけという結論になってしまいます。
このことが分かると日本こそ製造業の復権が重要となっています。今の輸出の中心は自動車ですが、これも電気自動車で中国が伸長しており、日本から家電などの輸出品を奪っていった状態と似ています。従って自動車の輸出は今後減ると想定した方がよさそうです。その他輸出が多い製品としては、半導体製造装置(東京エレクトロン)、建設・鉱物採掘重機(コマツ)、鉄道車両(日立)、エアコン(ダイキン)、小型モーター(ニデック)くらいでしょうか。これを見れば分かるように、輸出を増やすには1つの製品分野で世界のシェアを押さえることが重要となります。この点ではかっての総合電機メーカーでも事業の絞り込みが進んでおり、反転攻勢の体制は整ってきています。ただし最近品質・検査不正が頻発していますが、これは品質・検査業務が融通性の高い(不正が行われやすい)人手で行われているからです。ここまで機械化・スステム化の手が回っていないとも言えますが、機械化・システム化の遅れは製造システム全体に言えることのように思われます。これは日本では終身雇用制で職場の確保が優先されるため、機械化できる職場が機械化されないという事情もあると思われます。今後は若年労働力が減少し、工場労働者の確保が難しいことから、工場の機械化・スステム化が進むと予想されます。その結果、製品コストが下がる、品質が向上するなど輸出競争力の向上に繋がります。
現在の円安は、輸出できるものがないという日本の経済構造に根差したものであり、今後とも円安は進展すると思われることから、政府が現在進める政策としては、工場の機械化・システム化に対する助成や減税措置が重要となります。