教育費無償化で東京と大阪だけ人口が増える

総務省が7月24日に発表した住民基本台帳に基づく2024年1月時点の日本の総人口は、1億2,488万5,175人と53万1,702人減となっています。一方東京および大阪の人口は夫々68,278人、16,055人増加しています。

東京23区では、江東区6,226人、大田区5,209人、台東区4,909人、港区4,691人、板橋区4,686人、墨田区4,570人、品川区4,084人、北区3,969人、中野区3,784人、足立区3,109人、新宿区2,947人、豊島区2,946人、葛飾区2,825人、中央区2,761人、世田谷区2,702人、練馬区2,626人、文京区2,524人、荒川区2,454人、杉並区2,057人、江戸川区1,808人、渋谷区1,197人、目黒区885人と23区すべてで増加し、増加人口は68,278人となっています。東京都内の他の市町村は、増加・減少バラバラであり、23区内への流出もあるように思われます。23区内でも港区や中央区、渋谷区などは住宅価格や家賃が高いことからもっぱら富裕層の流入と考えられ、足立区や荒川区は埼玉方面、江戸川区、葛飾区、江東区、墨田区は千葉・茨城方面、大田区や品川区は神奈川方面から流入、ないしは住宅を購入しての移転と考えられます。

大阪を見ると、大阪市16,055人、吹田市1,365人、茨木市794人、箕面市190人増加していますが、大阪市の増加が目立ちます。大阪市は関西の三都(大阪市・神戸市・京都市)の中で一番評判が悪く、これまで富裕層は神戸方面に出て行っていました。これらの富裕層が帰ってきているとは考えづらく、それ以下の所得層が増えていると思われます。神戸市(-10,492人)や京都市(-5,661人)は大きく人口を減していますが、これは子育て世代が神戸の場合明石市、京都市の場合大津市などに流出していると言われており、大阪市に流出しているとは聞いたことがありません。そうすると大阪府内からの流入と周辺他県からの流入と考えられますが、大阪府内から大阪市内というのは余りメリットがないので、兵庫・奈良・和歌山(京都は文化的に合わないような)からの流入が多いのではないでしょうか。

私がこう推測する理由は、東京23区と大阪市の人口増加が顕著になったのはこの1,2年の現象であり、この1,2年の間に東京都と大阪府が実施した政策が影響しているのでは、と考えるからです。その政策と言うのは、教育費の無償化です。東京都と大阪府は2023年に高校授業料を所得制限なしに無償化することを決めました。これの意味があるところは、私立高校も無償化したことです。現在の大学受験では、受験指導に優れた私立高校への進学が有利ですが、授業料が高く(年間50万円程度)子供を私立高校に進学させられない家計が多くありました。親にとって実力はありながら家庭の経済的事情で子供を私立高校(実際は私立中学。従って私立中学の無償化がないのは制度の欠陥)に通わせられないことほど辛いことはありません。東京都と大阪府の高校授業料無償化策は、多くの豊かでない家庭に安心と希望を与えたと思われます。今年の大阪府の私立高校専願者(第一志望者)の割合は31.6%に達し、多くの公立高校が定員割れとなりました。これに加えて大阪市は小学5年生から中学3年生まで塾代やスポーツ教室料として月1万円を補助しています(10万人)。更に東京都は都立大学の、大阪府は大阪公立大学の無償化を計画していますから尚更です。

これで親たちは子供の教育費を心配しなくても良くなりますから、安心して子供産み育てられることになります。従って教育費無償化は少子化対策の決定打でもあります。

これが分かれば東京都と大阪府、その中心である東京23区と大阪市に人口が集まるのは当然と言えます。大阪市の横山英幸市長は記者会見で「家庭の所得状況によらず多くの子どもたちに学力や学習意欲、個性や才能を伸ばす機会を提供していきたい」と語っており、これを聞けば多くの親が大阪市に移転しようと言う気になるのは当然と言えます。

東京都立大学と大阪公立大学が無償化された暁には、東京と大阪に多くの若者が集まり、衰退する日本の中で東京と大阪だけが繁栄を謳歌することになります。