豊田会長発言が週刊誌だとこうも変わる

週刊誌Flashの報道(7月20日)によると豊田章男会長の発言はこうなります。

「長野県茅野市にある蓼科山聖光寺が開催する、夏季大法要に出席。交通安全祈願の催しの後、報道陣の取材に応じた。「朝日新聞」の報道によるとそこで章男氏は、不正問題を批判されたことを受けて、 「今の日本は頑張ろうと言う気になれない」「ジャパンラブの私が日本脱出を考えているのは本当に危ない」などと発言。さらに報道陣に「強い者をたたくのが使命と思っているかもしれないが、強い者が居なかったら国は成り立たない」と海外移転を匂わせるような“逆襲”に出たのだ。これにX上では反発の声が殺到している。 《とっとと出て行けよ》 《豊田章男の逆ギレ自己正当化、ほんとに滑稽だな》 《今すべきなのは己の不正と正面から向き合うことであるはず》」

この元ネタである朝日新聞の電子版では

「豊田会長は「日本のサイレントマジョリティーは、自動車産業が世界で競争していることにものすごく感謝していると思う」と述べた上で、「業界の中の人にも感じるような、応援はぜひいただきたい」と求めた。」(未購読なためこれだけしか読めない)

これを見ると朝日新聞はFLASHが書いたような主旨の記事は書いていないようです。FLASHの書き手がネットでバズルよう面白おかしく書きかえたことが伺えます。

これがFLASH記事を受けたベストカーWEB(7月23日)によるとこうなります。

「まず簡単に、今回の発言の状況を整理する。  今回話題となっているトヨタ自動車豊田章男会長の「今の日本は頑張ろうという気になれない」という発言があったのは、2024年7月18日に長野県茅野市にある蓼科山聖光寺で実施された、交通事故死者の慰霊や負傷者の快復を祈願する「夏季大祭」での、メディア向け囲み取材でのことだった。  「聖光寺」は1970年にトヨタグループの発案で交通事故死者の慰霊と安全祈願のために建立されたお寺で、毎年トヨタグループの代表者が夏季大祭に参加している。  なぜこうした背景が重要かというと、(取材に参加したメディア関係者は全員わかっていて、あえて一部しか報じていないが)今回の豊田会長の発言は「交通安全をさらに進めるためには何が必要か」という文脈の延長で出た話である、という点があるから。  そもそも認証不正問題とは関係がない。  豊田会長は、「交通事故防止のためには、自動車会社だけ、クルマ側だけでは、出来ることには限界がある。交通安全を推し進め、事故死者ゼロを本気で進めるのであれば、道路インフラ側や歩行者側、自転車や(電動キックボードなどの)新モビリティ側など、社会全体が一体になって進める必要がある」と語った。  「こうした話は、なかなか自動車会社からは言えない。言っても広がらない。我々もがんばりますが、そこは(メディアの)皆さんのお力を借りたい」と、豊田会長は続ける。  より具体的に言えば、今後50年先を見据えて、本気で自動車事故を減らすために(自動車会社だけでなく)行政や道路整備、自転車、歩行者といった社会全体で手を取り合って「安全」や「モビリティを含む社会のありかた」を考えましょうよと語り、その「社会全体」へ訴える手段のひとつとして、メディア関係者に語ったわけだ。  そのうえで、この日、豊田会長は当該発言について、実際には以下のように語っている。  「日本のサイレントマジョリティは、日本という国にとって、いま、日本の自動車産業が世界に対して互角以上に戦っていることについて、ものすごく感謝してくれていると思います。  ところがそれが、日本という国ではすごく伝わりづらいんですね。当たり前になっちゃっているのかもしれない。  もし日本に自動車産業がなかったら、いまの日本は違ったかたちになってしまうでしょう。それに対して感謝してほしいと言っているわけではありません。ただもうちょっと正しい事実を見て、評価してほしい。  (自動車関連会社が)間違ったことをしていたら怒ればいいと思います。そのうえで、応援していただけるのであれば、応援しているということが、自動車業界の中の人たちにまで届いてくれると、本当にありがたい。  そうしないと本当に、本当に、みんなこの国を捨てて出て行ってしまいます。出て行ったらこの国は本当に大変ですよ。  ただ、いまの日本は、ここで踏みとどまって、頑張ろうという気になれないんですよ。  (居並ぶメディア関係者に一瞬目線を送って)  強いものを叩くことが使命だと思ってらっしゃるかもしれませんが、強いものがいなければ、国というものは成り立ちません。強いものの力をどう使うかということを、しっかり皆さんで考えて、厳しい目で見ていただきたい。強いからズルいことをしているだろう、叩くんだ、というのは、これはちょっとね……、でもそこは自動車業界の声として、ぜひお考えいただきたいと思います。」

最後のベストカーWEBの記事は、豊田会長の発言をほぼ忠実に書き起こしたものであり、事実と言えます。FLASHの記事は豊田会長の発言を悪意を持って加工しており、犯罪レベルの内容となっています。ベストカーWEBは日野自動車の認証不正があったときもタイに居た豊田会長にインタビューし、トヨタと日野自動車の思想の違いを浮き彫りにする発言を拾っていました。豊田会長の発言をそのまま載せるので、記者のフィルターを通さない良質の記事になっています。

今回豊田会長はFLASHのバズリ狙いの記事の被害者ですが、豊田会長にも非があります。それはこれまでマスコミのこのような性向が嫌いで取材は受けなかったのに、7月18日は自ら認証不正についてのマスコミの報道を例にマスコミに語り掛けたことです。このような事態になることを防ぐためにトヨタイムズがあるのだから、この内容はトヨタイムズで語るべきでした。トヨタが建立したお寺の夏季大祭にわざわざ来てくれたマスコミ記者へのお礼のつもりだったのでしょうが、とんだハイエナ記者の餌食となったようです。こんなこともあるのでもう社外発信はトヨタイムズを徹底した方が良いと思われます。