日本の最低賃金1,050円は労働人口過剰の反映

今年の最低賃金は昨年比5%増の平均1,050円になりそうとの報道です。私は諸外国と比べ余りの低さにがっかりしました。たぶん今年の大手企業の平均賃上げが5%を超えたことから決まった金額だと思われますが、これでは物価上昇を賄えません。新聞の報道によると6月の東京23区の物価上昇率は2.2%となっていますが、その前提である総合指数が2020年10月を100として107.2と言うのが信じられません。電気代は5月比19.7%増ですし、コメだって30%くらい上がっています。豚肉やしかりです。その他多くの食品が2020年と比べると20~30%値上がりしています。少なくとも毎週買うような日常生活用品は確実に20~30%値上がりしています。これが2020年比7.2%値上がりと言うのはまやかしとしか思えません。たぶん1年に1~2度しか買わないような商品が物価算定の中に含まれているものと思われます。賃上げの際に考慮すべき物価上昇は、週1回以上購入される商品の値上がり率とすべきです。そうだとすれば20%以上の賃上げをしないと物価上昇は賄えません。そして20%賃上げすれば、韓国の今年の最低賃金約1,160円を抜くことができます。同じ仕事をして韓国より100円も安いと言うことは、韓国人より日本人は10%劣ることを認めるようなものです。

日本が何故こうも最低賃金が安いかというと、労働人口過剰だからです。よく人手不足だと言いますが、あれは嘘です。本当に人手不足なら、こんな低賃金にはなりません。昨年来メーカーで品質検査不正が多発していますが、あれも背景には労働人口過剰があります。品質検査は融通性がある人よりも融通性がない機械にやらせないといけないのですが、社内人員が過剰なため人にやらせている、あるいは機械にやらせるということにならないのです。日本のメーカーは社内人員が過剰なために生産現場の機械化も遅れてコスト高と品質のばらつきという問題を抱えていますし、営業や管理部門でも社内業務の機械化、システム化が遅々として進みません。多くの会社で今の要員を5年後半減するとなれば、一挙に機械化、システム化が進むはずです。それにより業務効率と品質が格段に向上しますし、社員の報酬は倍にできます。その暁には、労働人口が20~30%過剰な実体が明かになります。今年の最低賃金はこの実態を反映したものであり、この状態が是正されない限り国際水準の最低賃金に追いつけないと思われます。日本は1908~1965年くらいまで多くの移民を海外へ送り出すことによって労働人口過剰を解消してきており、またこの再現が必要な状況となっています。ただし過剰労働人口の多くが中高齢者である点が以前とは異なっており、移民による解決を難しくしています。