サル(国交省)が将軍(トヨタ)を呼び出して晒し者にした

7月31日国土交通省は、認証試験不正に関してこれまでにトヨタ自動車(トヨタ)から報告があった車種のほかに新たに7車種の不正があったとして、トヨタに道路運送車両法に基づく是正命令を出しました。不正の内容は以下の通りです。

1.別の試験で使用済みのFrバンパを再利用した

2.衝突速度を規定に収まるよう数値処理 (小数第2位切り捨て)した

3.規定と異なる積荷ブロックを使用した

4.申告と異なるステアリングで試験したが、成績書には申告時の仕様の写真を添付

5.量産と異なる部品で試験した

これを見ると探せばどこの自動車メーカーでも出てきそうな内容です。認証試験の担当部署は自動車の開発部門では不人気部門であり、要員の配置も十分ではありません。また試験の遂行に当たってはマニュアル通りでは適正なデータが取得でない場合もあり、担当者または担当グループの裁量に委ねられることも多いと思われます。開発部門幹部は認証試験の結果には重大な関心がありますが、試験方法には経験がないこともあって関心が薄いと言えます。そのため試験方法の不正はほぼ表沙汰になることはないと思われます。今回のトヨタの場合も6月の報告は担当部署の申告に基づいたものであり、全社的な検証は行われなかったと思われます。検証するノウハウがなく、人材もいません。それでもこれまで認証が通ったのは、監督官庁である国交省に認証データの審査能力がなく、ノーチェック状態だったためと思われます。国交省に金融庁の銀行検査並みの審査(検査)能力があれば、自動車メーカーでも社内検査体制を強化していますが、自動車メーカーで認証データの検査を行う部署はどこも存在しないと思われます。自動車メーカーでは認証データが問題になる(国交省の審査で指摘される)ことは全く想定していなかったはずです。

このようにトヨタを含む一連の認証不正問題の元凶は、認証データの審査能力がないのに監督していることになっている国交省にあります。ここ数年国交省は監督先の不祥事発生後立ち入り検査に入るのが年中行事のようになっています。昨年は日野自動車やダイハツの認証試験不正で、またビッグモーターの修理不正で立ち入り検査しています。2022年には前年に知床遊覧船事故を起こした遊覧船運行会社に立ち入り検査しています。知床遊覧船事故の場合、国交社は12年間必要な監査をしていなかったことが分かっています。国交省が監督する主旨は、事前に不正や事故を防止することにあるのですが、国交省の担当者が監督するのに必要な能力や技術を持ち合わせていないため、制度が形骸化しているのです。今回国交省は海外の認証においても5件の不正があり、各国当局に通知したとしていますが、これは海外で国交省が信頼されなくなっていることをひしひしと感じ、責任回避を図ったものと思われます。

このように国交省の監督能力欠如が日本で認証不正が頻発する根本原因であり、国交省こそ責任者の処分と組織の見直しが必要となります。国交省はこれを回避するため、今回トヨタを生贄に使いました。今回国交省が認定した新たな不正はそう重要な不正ではないにも関わらず、7月31日にトヨタの佐藤社長を国交省に呼びつけ、鶴田浩久物流・自動車局長から是正命令書を交付しました。トヨタの日本経済への貢献を考えれば、斎藤国交大臣が豊田会長または佐藤社長を呼び、大臣室で非公開で是正命令書を交付するくらいの配慮が必要でした。私がテレビ放映を見て一番驚いたのは、その場に多くのテレビ局、報道機関を呼んでいたことでした。こういうことに慣れていない佐藤社長の緊張ぶりが見て取ました。そのためNHKや民放で大々的に報道され、御上(国交省)=正義、トヨタ=悪者という江戸時代から続く絵ずらとなっていました。

7月18日豊田章男会長が「今の日本は頑張ろうと言う気になれない」「ジャパンラブの私が日本脱出を考えているのは本当に危ない」「強い者をたたくのが使命と思っているかもしれないが、強い者が居なかったら国は成り立たない」などと発言したことが一部で批判されましたが、これはマスコミへの不満と言うよりはトヨタ叩きで責任回避を図る国交省に向けられたものかも知れません。日本を出て行くべきはトヨタではなく役立たずの国交省です。

7月31日に国交省が行った儀式は、責任回避を図るサル(国交省)がトヨタ幕府の将軍(トヨタの社長)を呼びつけて晒し者にした構図であり、腐ったお題目官庁国交省の実体が良く表れたものでした。