株価値下がりはファンドの期限到来のため

8月5日日経平均株価が前週末比約4,451円値下がりしました。これは1987年10月20日の3,836円の下落を上回る過去最大の下落幅だそうです。前週末(8月2日)にも前日比2,217円下落していましたので、2日で6,668円下落したことになります。この下落幅も過去最大だと思われます。

今回の下落の原因について報道では、米国の景気が悪化した指標が出てきたこと、7月31日に日銀が0.25%の利上げを決めこと、それによりドル円レートが円高に振れ140円台前半まで上昇したことなどが上げられていますが、これらではこれだけの下落は説明できません。これだけ下落すると信用取引で株を買っている人は、担保不足となり買い持ち株を処分しなければならなくなりますから、これが買い手がいない中での大量の売りとなり、株価を大きく下げる要因になったのは間違いありません。しかし多くの人が知りたいのは、信用処分売りをしなければならない程まで下げた要因だと思います。

これについて納得の行く説明は見当たりません。私が投資会社にいた経験で言うと、株式運用ファンドの期限到来による処分売りが要因ではないかと思われます。私がいたのは未公開株投資会社(いわゆるベンチャーキャピタル=VC)ですが、VCの場合、期間10年で投資ファンドを作ります。そして最初の5年で投資を終了し、残り5年で株式公開(IPO)により回収します。投資した会社の4~5割程度がIPOしないとファンド出資者に約束した利回り(年利20%以上)を出せないと言われています。例えば100億円のファンドだと80億円を投資し(20億円はVCの手数料となる)、40億円分の投資がIPOとなったとすると、その15倍の600億円くらいの株価総額にならないと年20%以上の利回りにはなりません。だからVCとしてファンドを運営し続けるのは至難の業と言えます。

10年のファンドの期限が近づくと1年前くらいから清算作業に入ります。ファンドに組み入れた未公開株を処分して現金に換える必要があるのです(出資者は未公開株では受け取らない)。そこで未公開株を買ってくれる人を探すのですが、株式公開できなかった会社の株(今後も株式公開できない可能性が高い)が大部分ですから、買い手はいません。そこで投資先の社長に1株30万円で買った株でも1円で売却することになります。大損ですが、ファンドを期限までに清算するためにはやむをえないのです。

たぶん上場株の運用ファンドでも同じことが行われていると思われます。上場株の場合市場で取引されていますから、どんなに叩き売っても3,4割しか下がらないと思われます。ファンドの清算月になれば、こういう処分売りが行われることになります。日経平均は昨年の今頃32,000~34,000円程度であり、ここらへんでファンドが購入しているとすれば、この間日経平均は最高42,000円程度まで行きましたから20%以上の利回りは確保できています。そうであればファンドに残っている株は32,000円以上で処分すれば損は出ません。従ってファンドとしては32,000円までの処分は何ら問題ありません(それ以下でも処分する)。こんなファンドが相当重なって32,000円までの下げにつながったと考えられます。同時に株式運用ファンドとしては、新しいファンドを集めており、それにはできるだけ安値で株式を入れる(購入する)必要があります。40,000万円前後で購入していたら20%の利回りは出せない可能性が高くなります。そのため株価を大きく下げて買い場を作る必要があります。今回期限が到来したファンドが売った株や個人投資家が売った株は、この新しいファンドが買っていると思われます。

このように株式の大きな値下がりは、ファンドの期限到来による処分売りおよび新しいファンドの買い場作りと考えれば理解できます。株価が大きく動いたら、大体がファンドの処分や購入の場合、即ちファンドの都合と考えた方が良いと思います。