官僚が優秀だったことは一度もない

2024年の国家公務員総合職春試験における東大生の合格者は、前年の春試験より4人少ない189人で、過去最少を更新し、10年前と比べると半減しています。総合職の合格者総数は1,953人なので、東大生は1割にも満たなくなってしまいました。その分立命館大学や岡山大学、広島大学などが合格者を増やしています。これをみるとキャリア官僚の低学力化が進んでいることが分かります。これを持って日本の将来をあやぶむ声が聞かれますが、そんなことはないと思われます。それは、これまで官僚が優秀だったためしがないからです。戦後日本経済が急成長したことを持って、官僚が優秀だったからとする声がありますが、それは違います。あの頃官僚がやったことは欧米産業の輸入移植であり、いわば物真似でした。即ち物真似を主導していただけです。その証拠にバブル崩壊により物真似は通用しなくなると日本は一歩も前に進めなくなりました。優秀さは物真似が通用しなくなってから現れるものです。韓国や台湾は、今では1人当たりGDPで日本を抜いていますが、韓国は日本を物真似し(技術導入し)、台湾は米国を物真似し、成長しました。しかし韓国や台湾は日本や米国を物真似した後創造性を発揮し、世界一の製品や技術を開発しています。例えばサムスン電子は松下電器に学びテレビを製造販売しましたが、今では世界一の高級テレビメーカーになっています。さらに半導体でも日本のメーカーから技術を学び、改良を続けると共に投資を続け世界1,2位の半導体メーカーになっています。台湾の鴻海やTSMCも米国から技術を導入した後、世界屈指のメーカーに成長しています。これを成し遂げたのは、個別のメーカーが優秀だったことはもちろんですが、背景に韓国および台湾の官僚が優秀だったことが上げられます。それはアジア屈指で、世界でもトップクラスの裕福な国になっているシンガポールが官僚経営国家であることを見れば分かります。

日本の官僚制度は中国の科挙制度からきており、選抜試験に高順位で合格した者は出世コースに乗り、実績とは無関係に偉くなるシステムになっています。そのため競争がなく、優秀な人材に育つはずがありません。だから官僚は選抜試験に合格したときが優秀さのピークであり、その後は劣化していくというのが実際です。出世コースに乗った人は、政治家との付き合いや業界団体のお偉方との人脈づくりに励むことになります。従って国家戦略や経済政策、外交政策などはそれ以下の官僚が作成しており、レベルは知れていました。民間企業のように入社したら「よーい、ドン!」で競争の海に放り出され、高順位で泳ぎ切った者が出世する競争社会にはなっていないのです。その結果どの年代で見ても、官僚と民間企業社員の人間力やスキルには顕著な差があります(民間企業社員が遥かに上)。最近東大生が官僚にはならず民間企業を志向するのは、それが分かっていることもあると思われます(もちろん収入格差が一番)。このように官僚の実力のなさは人事政策からくるものであり、世間で言われている「官僚は優秀」という言葉は実体を有しません。官僚はこれまでも優秀ではなかったし、これからも優秀な人材は出てこないと思われます。官僚は地方公務員に対して中央公務員というのが実態であり、地方公務員が務まれば務まります。だから東大卒が減って、私大や地方国立大学卒が増えても全く問題ありません。