岸田首相は翔太郎秘書官で終わった
8月14日、岸田首相が9月に行われる自民党総裁選に出馬しないことを表明しました。20%前後の政権支持率や国政・都議選の補選で惨敗が続いていることから、出馬しても当選は難しく、当然の表明と見られています。
岸田首相は不人気ですが、実行した政策で見れば歴代政権でもトップクラスと言ってよいと思われます。まず防衛費をGDPの2%まで増やす道筋を付けましたし、こども政策もスタートさせました。NISAの拡大も将来個人資産の形成に貢献する政策です。半導体工場の国内誘致やラピダスへの支援も、国内製造業再興およびGDP拡大の観点から評価できます。外交面でも米国との同盟強化やNATO諸国との連携緊密化を進め、日本の安全保障の基盤を強化しました。いずれも現在の日本に必要な政策であり、岸田政権下では政策立案する官僚機構が機能していたことが伺えます。
政策面では良くやっているのになぜもこう不人気なのか?その原因は2つ考えられます。1つは、これらの政策の実行には多額の原資が必要になりますが、岸田首相は調達方法を明示しておらず、国民は増税や社会保険料の増大を強いられると考えていることです。事実子ども政策の原資については、社会保険料に上乗せして徴収することになっています。防衛費増大は、1兆円は増税で賄うことになっていますが、国民はこんなものでは済まないと考えています。日本では所得に占める公的負担(税金と社会保険料)の割合が昨年で47~8%に達していますが、これが岸田政権の新たな政策で50%を超えることになるのは間違いありません。国民はこれを感じ取って、岸田政権に不支持の意思表示をしていると思われます。
もう一つは岸田政権当初岸田首相が長男の翔太郎氏を首相秘書官に任命したことです。国民は首相には公正無私、滅私奉公を期待していますが、これは国民の期待を裏切ることでした。首相の業務の重要性を考えれば、それを補佐する首相秘書官には事務次官経験者など実務経験豊富な人を任命するのが通例であり、岸田首相が長男を首相秘書官に任命したのは私利私欲を優先させたと思われました。その結果岸田首相は、首相の器ではない、小人と見なされ、嫌われたように思われます。更に翔太郎秘書官には相次いで秘書官失格と言われても仕方ない事実が報道されましたから、この人事の失敗が浮きぼりになりました。これで岸田首相は国民から人間性を嫌われてしまいましたから、いくら良い政策を行って評価されません。それが現在の岸田政権不人気の最大の理由だと思われます。報道では自民党裏金事件をもって岸田政権不人気の原因としていますが、岸田首相自身が裏金を作っていたわけではなく、岸田政権不人気の理由にはなりません。安倍政権は高い人気を誇りましたが、あれは安倍首相個人の人気に基づくものであったことを考えれば、岸田政権の不人気は岸田首相個人の不人気によるものであることは明らかです。そして岸田首相を不人気にした最大の要因は、息子翔太郎氏を首相秘書官にしたことであり、この人事で岸田首相は終わったと言ってよいと思われます。