官庁は今の人事政策ではガラクタ生産工場

ヤフーニュースに掲載れた読売新聞の記事によると、「キャリア官僚」と呼ばれる国家公務員総合職のうち、採用後10年未満の退職者が2022年度は177人に上り、現行の試験制度で入省した2013年度以降で最多となったということです。退職の理由としては、「もっと自己成長できる魅力的な仕事につきたい」「収入が少ない」「長時間労働が常態化している」などが多かったということですから、解決される目途がないため今後とも増えることが予想されます。

退職の理由としては、新聞などでは「長時間労働が常態化している」「収入が少ない」ことを強調していますが、本当は「もっと自己成長できる魅力的な仕事につきたい」というのが一番大きいと考えられます。というのは、官僚の仕事は上がって来た統計データを利用した企画・報告書の作成が多く、どう見ても創造的には言えません。現場から自分で集めたデータではなく、地方自治体や企業が集めたデータを加工しており、扱うデータに実感が伴いません。例えば完成した建物の写真をとって完成報告書を作成しても、そのプロセスが分からないため感慨がありません。官僚の仕事はそんな仕事が多いと思われます。もし完成した建物の設計や基礎工事から経験し、そのプロセス全部に関わっていれば、完成した暁には感慨も一塩ですし、自信をもって報告できます。しかしこれらのプロセスの多くを欠く官僚の仕事のやり方では、自信を付けるのは不可能で、官僚という身分と職位が唯一の自信の根拠となります。

それに官僚は、国家公務員選抜試験の得点順位で将来の地位まで決まると言われており、これでは成績上位でない者は公平な競争がなく頑張る動機がありません。その結果得点順位で決まったルートの職場で失敗をしないことを重視し仕事をしますから、チャレンジがなく成長した実感が得られません。たぶん民間企業に就職した大学同期に会うたびに彼我の成長度合いが開いていくことを感じ、絶望していくことになります。官庁の事務次官は民間企業で言えば社長で、局長は専務、部長は取締役などと言われていますが、利益を上げて出世してきた民間企業の役員と選抜試験の順にそのまま偉くなった官庁の幹部とは、スキルや人格などで大きな差があります。ある人は官庁の幹部を指して「大学院生がそのまま年をとったような人が多い」と表現していましたが、私も同感です。

官庁幹部のこんな実態に自分の将来を重ねて退職する若者が多いのではないでしょうか。選抜試験に合格した官僚は学力優秀なのは間違いなく、20代の転職なら間違いなく引手あまたです。これが30代なら門戸が狭くなりますし、40代以上なら受け入れ先は殆どなくなります。官僚のノウハウが民間企業で役に立つことは無いと思っていいと思います。そういうことで20代の官僚の退職(転職)が多くなるのは当然と言えますし、今後この傾向は更に大きくなると思われます。これを少しでも減らすには、人事政策として官庁就職後は選抜試験の成績は考慮せず、毎年実績で評価し昇進昇格を決めるようにすることが必要です。それに最近官僚知事のパワハラが多くなっており、課長以上に昇格させる場合には、上司・部下・関係先などの評価(360°評価)を実施し、D(良くない)、E(悪い)が2割以上あったら管理職に昇格させない制度にする必要があると思われます。

官僚の退職を減らすには、競争環境を作り自分が成長している実感を持つことができるようにすることが不可欠です。これをしないと官庁はガラクタの生産工場と化します(なおこれまで官僚が優秀だったことは一度もありません。「官僚は優秀」と言う言葉は官僚が自己満足のために、政治家が官僚操縦のために言っているだけで、民間企業では聞いたことがありません)。