菊陽町の次の一手は中華学校の誘致
菊陽町はTSMC第一工場の南側の農地等25haを工業用地して買収する計画に着手したという報道です。TSMCは第一工場の東側に第二工場を建設しており、次は第三工場の建設が予想されます。第三工場については、2つの工場があることから菊陽町が一番有力であることは間違いありませんが、先端半導体工場なら他地域に作るのではという声もあります。その理由として先端半導体(線幅3nm以下)の製造には大学の研究者や半導体関連企業との連携が不可欠だからということを挙げていますが、台湾の工場で完成した技術を移植するはずであり、説得力に欠けます。もし他の地域に工場を作るとすれば、中華学校が近くにあるからという理由が考えられます。日本の企業も中国に工場を作る場合、日本人学校が近くにある地域を優先的に考えます。従って中華学校(東京、横浜、大阪、神戸)が近くにある地域(神奈川、茨城、京都、兵庫など)は、これを強みとして誘致に動く可能性があります。
そんな中で菊陽町が第一工場の目の前の土地を提供すべく動いたのは英断と言えます。あそこを提供されてTSMCの心が動かないことはありえません。私の予想では100%TSMCはあそこに工場を建設することになります。第一工場および第二工場の顧客は今のところソニーの熊本工場ですが、TSMCが次に狙っている顧客はトヨタなど日本の自動車メーカーであり、受注に成功すれば第三工場建設に着手すると予想されます。自動車向け半導体は第一工場で生産しているレベルでよいことから、第三工場は第一工場の近くに作るのが合理的です。トヨタの動き次第では第二工場完成後(2027年)速やかに第三工場の建設に着手する可能性があります。
第一工場はこの秋にも操業を開始するようなので、今後TSMCに原材料やメンテナンスサービスなどを提供する台湾企業が熊本に進出することが考えられます。その場合台湾人社員も多数やってくることになりますが、一番頭を悩ますのが子供の学校の問題です。これまではTSMCの幹部社員が中心でしたら、子供はインターナショナルスクールに行くケースが多かったようですが、インターナショナルスクールの費用は年間150~200万円と言われており、高給と言われるTSMCでも一般社員が出せる金額ではありません。日本の学校に行くことは、2~3年で台湾に帰る社員が多いことを考えるとデメリットしかありません。
そこで考えられるのは、菊陽町が中華学校を誘致することです。TSMCとしても台湾人社員が増えてくると会社として中華学校を作る動きが出てくると考えられますが、それは第二工場完成後以降になると思われます。その間にも台湾のTSMC取引先企業の熊本進出を促進するためには、菊陽町で中華学校を用意し、子供の教育の問題を解消することが必要です。
菊陽町に来る台湾人の子供も菊陽町の町民であり、菊陽町は日本人の子供と同じように十分な教育を提供する義務があります。子供が増えたため新たな学校を作るのと同じことです。
日本の小中学校を作ったことはあるけれど中華学校は作ったことはないはずなので、考えられるやり方としては、日本にある中華学校の熊本校を誘致することです。日本には東京、横浜、大阪、神戸に中華学校がある(台湾の教育制度に沿った教育を実施している)ようなので、その学校法人に熊本校の設立を働きかけます。土地、建物は菊陽町が無償貸与し、学校の運営費も全額負担します。日本の小中学校と同じですから問題ないはずです。こうして中華学校ができればTSMCの取引先ばかりでなく日本進出を考えるその他の台湾企業も熊本に来ることになり、熊本は菊陽町を中心に台湾企業の一大拠点となります。