中国に抜かれたと認める韓国、認めない日本

9月24日のヤフーニュースに朝鮮日報の「中国は半導体を除けば韓国に追い付き、大半は追い越した」「もはやわれわれ韓国人が知っている中国ではない」という記事が掲載されていました。9月25日には同じくKOREA WAVEの「主要技術で韓国を追い越した中国…急成長の背景にある戦略」という記事が掲載されていました。この2つの記事を読むと韓国は多くの技術で中国に抜かれたことを認めていることが分かります。

朝鮮日報の記事は、韓国貿易協会が中国に現地法人をおいている韓国企業や外資系企業の幹部30人を対象に深層(本音)インタビューした結果をまとめたもので、韓国国内の認識とは違うようですが、今後韓国内でもこの認識が浸透して行くと思われます。中国が躍進している要因として韓国内では中国政府が巨額の補助金を出しているからとしていますが、インタビュー結果では

・必要なら徹夜する柔軟な勤労体系

・アイデアがあればすぐ実行する迅速な意思決定

・失敗した90%の企業の技術を残った10%の企業が吸収する迅速な革新戦略

が要因であるとしています。

中国と韓国の技術革新のスピードに関しては、以前は韓国が「パリルパリル(早く早く)」で中国は「慢慢地(ゆっくりと)」だったが、今では中国が「快快(はやくはやく)」で韓国より早くなっているとしています。鉄鋼や化学産業など売上規模が大きい産業で中国企業が世界一になっているばかりか、自動運転、スマートフォン、ゲームなどの先端産業でも中国企業が先を走っていると言っています。例えば

・2022年に中国で生産された自動運転車は約700万台であり、武漢ではレベル3,4のタクシーが営業運転しているのに対して、韓国はレベル1,2の自動運転機能を搭載するに留まっている、

・中国ではベルコンベアの無い工場が実現している、

・折り畳みスマートフォンの生産ではサムスン190万台に対してファーウェイは700万台生産している、

・更にファーウェイは3つ折りのスマートフォンの発売を開始した

ことを挙げています。

KOREA WAVEでは、韓国科学技術情報省の「2022年の技術水準評価」を引用し、11の主要な科学技術分野で中国が韓国を追い抜いたとしています。この評価は2年ごとに日本、韓国、中国、米国、EUの技術レベルを評価するものです。例えば二次電池分野では評価点が中国82.6、韓国81.5で中国が韓国を追い抜いたと判断しています。この原因としては中国が科学技術強国を国家戦略として掲げ、科学技術を集中的に強化ていることを挙げています。特に1990年代から始まった海外の優秀な人材を積極的に登用する「百人計画」「千人計画」「万人計画」により多くの優秀な科学者や技術者を国内に呼び戻したことが効果を発揮しているとしています。この結果AI分野における世界上位500人の研究者のうち米国人が31.8%、中国人が24.2%であるのに対し、韓国人はわずか5人で1%に過ぎないとしています。またバイオ分野の革新技術のうち中国が4つで1位、米国が3つで1位を獲得し、韓国が上位5位に入ったのは合成化学の1つだったとしています。ここでは日本は出てきませんので、競争相手とは見なされていないことが分かります。いずれ比較対象から外されることが予想されます。

このように韓国は極めて冷静に競争相手のことを分析していることが分かります。韓国企業が世界的競争力を維持し、韓国経済が繁栄を続ける原因であるように思われます。一方日本にはいまだ日本経済が韓国経済より上、日本製品の方が韓国製品より品質が良いと思っている人が多く、中国企業など日本企業の相手ではないと思っている人が大部分だと思われます。しかし現実は、日本企業は韓国企業に歯が立たないばかりか、中国企業には相手にされなくなっています。日本人もこの現実を直視し、韓国や中国に追いつくための戦略を考える必要があります。