サイエンスパークを分散させるって九経連は馬鹿?

九州経済連合会の倉富純男会長は日本経済新聞の取材で、半導体産業の集積や産学連携を図る「サイエンスパーク」の構築について「2027年をめどに運営体制などの骨格を示したい」と述べると共に、「各県に分散して設置し、相互に連携させる構想」を示したということです。

私はこの記事の「九州各県に分散して設置し、相互に連携させる構想」につき、「馬鹿じゃないか」と思いました。なぜならば、これではサイエンスパークにならないからです。サイエンスパークというためには、多くの研究機関や工場が一か所に集積する必要があります。九州各県に分散していたらサイエンスパークにはなりません。「連携させる」言いますが、九州各県のように離れていたら連携は不可能です。九州には7つの国があると言われているように、各県の交流は少なく地域特色が強くなっています。こんな中各県に研究機関や工場などが集積したエリアを設けても、そのエリアでさえ効果が上がらないばかりか、連携効果は不可能です。たぶん各エリアの形成も不可能だと思われます。例えば福岡県は久留米市にバイオの研究所や企業の集積を図ろうとましたが、上手く行っていません。熊本県は八代市を中心にフードバレーを形成しようとしましたが、構想倒れになっています。当然で核となる工場や研究所が存在しないから、他の工場や研究所が集まってくるはずがありません。

台湾の新竹サイエンスパークを参考にしているようですが、新竹サイエンスパークはTSMCの工場や研究所を核にして形成されたものであり、多くの企業や大学が集まってくる理由があります。九州でサイエンスパーク構想が持ち上がったのは、熊本にTSMCの工場ができるからであり、新竹サイエンスパークに似た環境が出来つつあるからです。従って九州にサイエンスパークを作るとすれば、TSMC熊本工場の周辺しかありえません。問題は周辺に新竹サイエンスパーク並み(約1,471ha)の用地を確保できないことですが、新竹サイエンスパークの場合、何もなかった地域を買収しサイエンスパークとして整備したものであり、熊本で同じ規模のものを整備することは不可能です。それに新竹サイエンスパークはTSMCの本拠地でありTSMC熊本工場は1海外工場に過ぎないことから、新竹サイエンスパーク並みの集積は考えられません。従って300haもあれば十分だと思われます。九州大学の伊都キャンパスの面積が約272haとなっていますので、何もない山に囲まれたエリアを買収し、用地を造成することになります。TSMCの工場から10km以内ならこの程度の土地はあるのではないでしょうか。三井不動産が準備に動いているようですから、割と早く候補地は見つかると思われます。または菊陽、大津、合志に30haくらいの工場・研究所などの集積地を10か所つくることでサイエンスパークの機能を発揮させることも考えられます(新竹サイエンスパークも1,471haのうち工場や研究所などの施設が立地しているのは一部の面積)。サイエンスパーク構想はあくまでTSMCの工場があっての話であり、熊本以外の各県は関係のない話です。9月24日に熊本を訪れた台湾経済部の郭智輝部長も「熊本がサイエンスパークになる可能性高い」と話しており、他県は眼中にありません。こんな背景も理解していない九経連の倉富会長の発言は笑止千万であり、九州経済界のレベルの低さを表すものと言えます。