熊本工業高校を県立高専に移行すればよい
滋賀県は2028年4月に県立高等専門学校を新設するとの報道です。何の専門学校だろうと思っていたら、国立の高専と同じ工業高等専門学校だということです。滋賀県には国立高専が置かれていなかったこことから、これの代わりのようです(国立高専が置かれていない県は、埼玉県、神奈川県、山梨県、滋賀県、佐賀県)。現在高専卒業生はメーカーから引っ張りだこであり、需要に供給が追い付かない状況のようです。かつ最近高専から大学への進学が増えており、その分高専卒業で就職する学生数が少なくなっています。大学では高専卒業生は工学の基礎教育が終了していることから3年次編入扱いとなっていますが、高専卒業生の優秀さが知られるところとなり編入枠を増やす大学が増加しています。高校普通科から大学工学部に進学した場合、学部4年間の教育では十分でなく修士課程に進むのが普通になっていますが、高専からの編入者の場合、学部2年間の教育でも十分なようです。というより高専卒業時点でも十分な実力を備えており、大学進学は大卒の資格を取ることを目的とする学生も多いようです。大学にとっては、高専生の物作りの基礎まで学んだ経験が魅力であり、普通科卒の学生からは得られないアイデアが得られると言われています。今年開設された熊本大学半導体プロセス工学課程は、定員40名のうち20名を高専からの編入生枠としており、工学部への進学ルートとしては高校普通科経由より高専経由の方が魅力的であることが分かります。
従って今後は各大学が高専生の編入枠を更に拡大し、大学工学部進学を希望する高専生は殆どが工学部3年次に編入できるようになると考えられます。その結果大学工学部進学は高専経由がメインルート化することから、高校再編が必要になってきます。
高専は現在国立51校、公立3校(東京都立産業技術高専、大阪公立大学高専、神戸市立高専)私立4校(サイレジオ高専、国際高等専門学校、近畿大学高専、神山まるごと高等専門学校)あり、滋賀県立高等専門学校は県立初の高専となります。
熊本県ではこの8月木村知事が「高校普通科はいらない」と発言して物議を醸しましたが、エッセンシャルワーカーが不足しているのは高校普通科が原因ではなく的外れな発言ですが、普通科経由より高専経由の方が大学工学部への進学ルートとして魅力が増していることを考えると的を得ていることになります。ただしいきなり普通科を高専に転換することは難しいことから、先ずは工業高校および商業高校を高専に転換することが考えられます。工業高校も就職率は良いようですが、高専ほどの人気はありません。それに工業高校の場合、工場勤務のエンジニアとして就職することが多く、高専のように大学に行く道が閉ざされています。これは工業高校での教育期間が3年と短いためであり、技術者としての基本的教育を行うためには5年は欲しいところです。従って工業高校の教育期間を5年にして高専化することが考えられます。先ずは熊本工業高校を高専化し、徐々に他の県立工業高校にも広げていきます。同時に熊本商業高校を商業高専化することも考えられます。
この後は高校普通科改革になりますが、この場合高校普通科を解体しいくつかの高等専門学校(工業に限らない)に分けることが考えられます。例えば大学工学部に進学するのなら工業高専、医学関係(医師、薬剤師、看護師、臨床検査技師など)に進学または就職するのなら医療高専、法曹を目指すのなら法曹高専、会計士を目指すのなら会計高専に進学することにします。法曹高専に進学すれば卒業までに司法試験に合格する学生が出てきますし、会計高専に進学すれば卒業までに公認会計士や税理士に合格する学生が少なからず出ます。多くは大学の専門学部または資格予備校に進学し、資格取得を目指すことになります。このように大学が専門学部制をとっている以上高校普通科経由より高専経由の方がシームレスな教育ができます。普通高校は将来就きたい職業が決まらない生徒向けに一部残るかも知れません。高専経由大学進学が一般化すると一般教養が疎かになるとの心配が出てきますが、これには通信教育制の教養大学を用意します。教養は身に着けたいと思わない限り身に付きませんし、専門的な手法を身に付ければ一般教養は自力で習得できます。
木村知事の「普通科いらない」という問題意識は当たっており、高専化が解決になります。