木村知事の旅行割助成金返還せずは恥知らず

先ず熊本県のHPに掲載された下記公告を読んでください。

熊本県旅行助成事業「くまもと再発見の旅調査委員会報告書に基づく旅行業者の名誉回復について

ページ番号:0216783 更新日:2024年10月10日更新

熊本県旅行助成事業「くまもと再発見の旅」に関して、昨年9月に報道機関各社に対し公益通報が行われ、県から独立した調査委員会により約6か月におよぶ調査・審議を経て、本年4月に報告書が公表されました。
公益通報で指摘された「旅行業法に抵触するなど助成金の不適切な受給があったこと」、「それを県幹部が見逃しを指示したこと」、「それによって県民に損害を与えたこと」については、いずれも認められませんでした。
一方で、「県が助成要件や周知状況について検証せずに、旅行業者が不適切受給をしたと断定したこと」など、本県の対応の問題点について指摘を受けました。
当該事業は、新型コロナウィルス感染症の影響を受けて苦境を強いられている県内の観光産業を支援するために実施したものですが、当該事業を執行するにあたっての県の対応の問題により、今回のような事態となったことに対して、旅行業者の皆様に対して深くお詫び申し上げます。また、県行政に対する疑念・不信を持たれるような事態になったことに対し県民の皆様に陳謝いたします。
特に、企業名を公表された旅行業者の方々に対しましては、不適切受給であるかのごとく報道されたことにより、多大なるご迷惑をおかけすることとなりました。このような事態を招き、名誉を傷つけてしまったことに対して、改めて深くお詫び申し上げます。
今後は、調査委員会で指摘された提言を真摯に受け止めて、業務の的確・適正な執行に努めて参ります。

ここからは本題です。

昨年熊本県旅行助成事業「くまもと再発見の旅」に関して、県幹部が助成金の不正(不適切)請求を見逃すよう指示したとして公益通報があり、熊本県は第三者委員会を設置し調査し、その結果が今年の4月公表されました。結論は、

・助成金を請求できる要件が担当課内でも曖昧であり、かつ参加旅行業者に周知徹底されていなかった

・そのため担当課の判断と違う旅行業者の請求を不正請求とすることはできない

・従って不正請求はないのだから幹部の不正請求見逃しの指示もなかった。

ということでした。公益通報の証拠とされた録音テープからすると、幹部は不正見逃しの指示ととれる発言をしており、素直に解釈すれば「不正見逃しの指示があった」となるのですが、これでは旅行業者から不正請求があったことになり、旅行業者が救済されないため、あえてこのような論理構成をとったものと考えられます。少しトリッキーなやり方ではありますが、旅行業者を救済することを重視すれば、許される論理構成だと思われました(ただし、県幹部の「不正見逃し指示はなかった」を導くための論理構成とも考えられる)。

この報告書の結論に従えば、不正請求はなかったのであり、熊本県は不正請求があったとして返還させた助成金を旅行業者に返還し、不正請求をしたと報道されたことによって旅行業者が被った損害と名誉を回復する必要があります。これについては当時の蒲島知事が「返還された助成金の返還も含めて検討したい」と述べていました。

これについて10月10日木村知事は記者会見で、県のHPに旅行業者の名誉回復のための公告を掲載すると述べました。それが上記の文章です。これを見て驚いたのは、名誉を回復する対象の旅行業者の名前がないことです。要するに謝罪公告なのに謝罪する相手の名前がないのです。たまに新聞で裁判に基づく謝罪公告を見ますが、必ず謝罪相手の名前が明記してあります。これがなければ謝罪公告とは言えません。熊本県の謝罪公告(名誉回復公告)には名誉を回復する相手の名前(報道されたのは阪急交通社とTKUヒューマン)が書いて無く、名誉回復になりません。

肝心の返還させた助成金の返還については公告文に何も書かれていませんが、記者会見で木村知事は「JTBと阪急交通社については、県が定めた要件に合致していなかったので返還させたのであり、これを県が返還することはない。助成金の要件は県が決めることになっていた。」(要旨)と述べています。ここでJTBというのは、参加した中小旅行業者の事務局を務めていたことから、中小旅行業者が返還を求められた分約1,000万円を一括して返還したJTBであり、阪急交通社というのは、要件に違反していたとして約1,500万円の返還を求められた阪急交通社のことだと思われます。残るはTKUヒューマンの約2,000万円ですが、これについては県が返還したのか、TKUヒューマンは返還する約束をしていただけでまだ県に返還されていなかったのか不明ですが、多分後者だと思われます。これが正しいとすれば、県は一切返還しないこととなり、おかしなことになります。第三者委員会の結論は、要件が曖昧でかつ周知徹底されていなかったから、旅行業者が請求できると判断し請求した助成金は不正請求とは言えない=不正請求はなかった、となっていますから、JTBも阪急交通社も不正請求はしていないことになり、県は返還させた金額を全額返還しなければならないことになります。木村知事は返還しない理由を「助成金の要件は県が決めることになっていた」のだからと言っていますが、第三者委員会はその要件が担当課の中でも曖昧であり、かつ周知徹底されていなかった(要件を明示した文書も配布されず、説明会も開催されていない)から、旅行業者が請求できると判断したのはやむを得ず、これを不正として返還させることは妥当でない、と結論付けているのです。県がJTBと阪急公社に返還しないということは、第三者委員会の結論を受け入れないということになります。だとすれば第三者委員会の結論も変わってくることになります。というのは、第三者委員会は公益通報の中心テーマである「幹部が不正見逃しの指示をした」ことに関して、「不正請求は存在しなかった=正当な請求だった」のだから、「不正見逃しの指示はなかった」と結論付けているからです。ここで県が「要件は県が決められたのだから、県(担当課)が要件違反の請求があった(不正があった)と認定して返還を求めたのは妥当であり、返還する必要はない」というのなら、「幹部による不正見逃し指示はあった」ことになります。これはテープを聞けば明確です。

県のこの結論に対して第三者委員会が抗議しないとすれば、第三者委員会は蒲島知事や不正見逃しを指示した幹部を守ることが目的であり、その目的は達成されたからと考えられます。本件第三者委員会の委員3名のうち2名は2018年に熊本市議会議員の議員資格取り消しが問題となった熊本県の自治紛争処理委員会の委員であり、当委員会は熊本市議会が決定した市議の資格取り消しを無効というトリッキーな裁決を下しています。この市議は復職後公職選挙法違反で失職していますので、裁決の妥当性が問題となりました。この2名が第三者員会委員に就任したのは、このときの任命権者である蒲島知事の指名のように思われます。だとすればこの委員は依頼者である蒲島知事や県の幹部の意向を配慮するのは当然です(報告書に蒲島知事は全く登場しない)。その結果考え出された論理構成が「要件が曖昧であったことが問題であり、不正請求はなかった」でした。これなら蒲島知事も幹部も守られます。しかしこの結果、県は旅行業者に返還させた助成金を返還する必要が出てきます。これを県が守らず第三者委員会も抗議しないとすれば、第三者委員会の結論は県と第三者委員会が通じた茶番と思われても仕方ありません。

旅行割助成金問題に対する木村知事の対応は、第三者委員会の結論からは出てこないものであり、破廉恥レベルです。木村知事は知事就任以降不適切発言を繰り返しており幼稚性が顕著ですが、本件対応を見ると論理的思考力も無く、かつ公平性や公正性も持ち合わせていないことが分かります。とても熊本県の知事を任せられるレベルにはなく、こんな人が後4年も知事をやるのかと思うと絶望感しかありません。熊本県のHPを見ると「こどもまんなか」という大きな文字が見られますが、県庁のトップが「こども」だと県庁が「こども園」化してしまいます。