斎藤知事は全国の知事の中でも優秀と言ってよい
兵庫県の斎藤知事(もう知事ではないが分かりやすくするためこの呼称を使用)を巡るヤフコメを見ていたら、次のコメントがありました。
「やはり斎藤さんには実績がある。 また、一連の対応を見ても鋼のメンタルなのは間違いない。 だからこそ抵抗勢力と戦える。
・1000億超えの県庁舎建て替えストップ
・知事の報酬カット(給与30%、退職金50%減額)
・高級車「センチュリー」を廃止
・職員OBの天下りを規制
・県の貯金33億円を127億円までアップ
・県立大学無償化
・私立高校の実質無償化
引き続き改革を推進してもらいたい」
以前のヤフコメは斎藤知事批判一色でしたが、最近はこのような斎藤知事の再選を支持するコメントが増えてきました。支持コメントの特徴は、しっかり支持する根拠を挙げていることです。一方まだ批判コメントが多数ですが、その理由は
・元局長が亡くなったのだから責任を取るのが当たり前、
・職員に数々のパワハラをしている、
・公益通報を握りつぶした、
・プロ野球パレード寄付金集め担当の職員が亡くなっている
等が多いです。特徴として証拠がなく、感情論が多いことが上げられます。本件問題の元となった元県局長がマスコミにばらまいた告発文には証拠が添えられておらず、マスコミでも公益通報として扱うのは困難でした。尚告発文では次の7項目 を疑惑として挙げているということです。
(1)人事=ひょうご震災記念21世紀研究機構の副理事長2人が突然解任
(2)知事選=2021年知事選で幹部職員らが斎藤元彦氏の選挙を手伝い
(3)知事選=次期知事選に向けた投票依頼のため、商工会などに出向いた
(4)贈答品受領=地元企業からコーヒーメーカーやロードバイクなどを受け取った
(5)パーティー券=副知事らが斎藤氏の政治資金パーティー券を商工会などに大量購入させた
(6)優勝パレード=阪神・オリックス優勝パレード費用を信用金庫などから不正に集めた
(7)パワハラ=机を叩いて激怒したり、職員を怒鳴り散らしたりした
県議会が設けた百条委員会の最大の課題は、告発内容の証拠を掴むことでした。告発者にとっても百条委員会は公益通報に準じた扱いをしてくれることから願ったりかなったりだったはずです。そのため告発者が百条委員会で証拠を提示できれば、斎藤知事を失職に追い込むことが出来ました。ところが元局長が自死したことから、告発内容が真実であることを証明することができなくなってしまいました。自死の原因については告発内容を証明する根拠を持ち合わせていなかったからという憶測が当然出てきます。職員アンケートも実施したようですが、決定的なパワハラは出てこず、悪口レベルの内容です。これでは民間企業でもパワハラで首にすることはできません。そんな中県議会全会一致で斎藤知事への不信任案を可決しました。可決の根拠は、パワハラや公益通報の取扱違反ではなく、県政を混乱させた道義的責任としています。
この問題を兵庫県民以外が客観的に見ると、5期20年続いた前知事のお任せ県政に慣れ切った県職員が、若いやり手の知事が就任し次々と新しい施策を行うことに付いていけず、不満が溜まって反乱を起こしているように思われます。特に斎藤知事が任命した副知事と告発した元局長の間には、知事交代により主流派と非主流派が入れ替わったことによる確執があったように見えます。
前記ヤフコメ記載の斎藤知事の実績が事実だとすれば、旧来の予算が剥がされ、担当が無くなった(他の担当になった)職員も多いと思われ、不満が渦巻いていたと思われます。しかし新たな予算を確保することは並大抵のことでなく、斎藤知事はやる気があり優秀なのは間違いありません。職員の反発を恐れず予算を組み替えるやり方は、斎藤知事が大阪府の財政課長をしていたときに松井知事がやったやり方をまねている(むしろ斎藤氏が主導した?)ように思われます。ただし松井知事には橋下大阪市長という盟友がいて、議会では自らが創設した維新が大多数派であり環境が整っていましたが、斎藤知事は孤立無援の状態で(単騎で)兵庫県庁に乗り込みこれを実行しており、困難さは段違いです。これをよく理解している松井氏は斎藤知事を擁護しているように思われますが、吉村大阪市長はパワハラの証拠がないにも関わらず批判的であり、斎藤知事の支援政党であった維新も引きずり降ろしに転じました。これは政治的な斎藤批判勢力に迎合するものであり、人間として恥ずべき行為です(橋下氏も傍観者を決め込んでいるのも残念です)。
前掲の斎藤知事の実績にある兵庫県立大学の無償化は画期的と言えます。公立大学の無償化は、大阪公立大学と東京都立大学で計画されており、これらを出し抜くこととなりました。これについては「無償化の恩恵を受ける範囲が県内の高校卒業生の1.7%と一握りの人に限られる」として批判も多いようですが、これは教育費無償化に向けて退路を断ったものであり、県民全員に恩恵が及びます(県立大学無償化から始めたのは予算の関係上)。良く高速道を建設するのに終点から建設を始めることによって計画が途中で中止されるのを防ぎますが、これと同じです。県立大学を無償したら高校無償化は当然であり、教育費全般の無償化に行き着くことになります。既に私立高校では年収590万円未満の場合396,000円の就学支援金が支給されるほか910万円未満の場合、授業料軽減補助を実施しており、私立高校の実質無償化が実現しているようです。これを東京都や大阪府と比べると財源力が落ちる兵庫県が実施するとなると、財源の確保(他の予算を付け替えなければならない)が大変だったことは想像に難くありません。
県立大学無償化(教育費全般の無償化)の威力が分かっていない人が多いようですが、この政策を実施できる都道府県だけが今後人口が増加する(または減少率が小さくなる)ことになります。総務省が今年7月24日に発表した住民基本台帳に基づく2024年1月時点の日本の総人口は、1億2,488万5,175人と53万1,702人減っていますが、東京都および大阪府の人口は夫々68,278人、16,055人増加しています。これは東京都や大阪府に住めば、お金がなくて子供を私立中高校や大学に行かせられないという親にとって一番つらい目に合わなくて済むことが大きな要因になっていると考えられます。これが分かれば県立大学無償化は、兵庫県の人口が増えることに繋がる重要な政策であることが分かります。これだけを見ても斎藤知事は全国的に見ても優秀な知事であり、これを変化を嫌う県職員の反乱や内部抗争で失うのは兵庫県民にとって大きな損失と言えます。