ビートル浸水隠蔽事件でJR九州本社に家宅捜査が入る

博多と韓国釜山を結ぶJR九州高速船の旅客船ビートルで浸水が起きているにも関わらず運行を続けていた問題で、10月17日海上保安部がJR九州高速船の事務所に家宅捜査に入りました。2月12日に2~3㍑の浸水が確認されてから5月30日に浸水が1mに達するまで運航を続けていました。これは当時の田中社長の指示ということであり、旅客船運航史上でもまれに見る悪質なケースと言えます。なぜこんなことが起きたかというと、2022年4月23日北海道知床沖で26人が乗った観光船「KAZUⅠ(カズワン)」が沈没した事故で、捜査した海上保安本部が運航会社社長の責任を問うていなかったからです。これに気付いた海上保安本部は9月18日運航会社「知床遊覧船」の桂田元社長を逮捕しました。事故から約2年半経過してからの逮捕であり、もっと早く逮捕していればJR九州高速船の田中社長が運航継続を指示することは無かったという反省に立ってのものと思われます。従って今回の捜査はこの時点で予想されました(9月26日ブログ「ビートル浸水隠蔽で刑事捜査が始まる」参照)。

海上保安部の捜査着手で田中社長とビートル船長の逮捕は免れませんが、海上保安部のターゲットはもっと先にあると思われます。JR九州高速船はJR九州の子会社ですが、ビートルの建造費やコロナによる運休で巨額の赤字を抱えていたことからJR九州本体の直接的管理下にあったと思われます。そのため田中社長は社長といえどもJR九州の担当部署や担当役員の管轄下にあり、多くのことを報告、相談していたと思われます。田中社長が浸水を知って3カ月間もJR九州の担当部署や担当役員に報告しなかったとはちょっと考えられません。特に5月30日には運航停止、ドック入りを決めていますが、これについては損益悪化と修理代金確保の問題があることから、JR九州の担当部署や担当役員の承認が必要となります。従って遅くともこの際にJR九州高速船田中社長からJR九州の担当部署や担当役員に浸水がありながら運航を続けていた経緯が説明されていると思われます。この問題はJR九州の損益に影響することから、担当役員から古宮社長に報告されたと考えられます。更には古宮社長から青柳会長にも報告が上がっていると考えるのが普通です。この考えが当たっているとすれば、ビートル浸水隠蔽事件はJR九州の古宮社長と青柳会長も承知していながら是正の指示をしなかったことになり、JR九州ぐるみの犯罪行為となります

これを検証するため今後海上保安本部はJR九州本社に家宅捜査に入ると予想されます。JR九州社内では関連する書面は破棄されていることが考えられますが、JR九州高速船関係者やJR九州の担当者を追求すれば事実に辿り着けます。その結果JR九州の担当役員や古宮社長、青柳会長の刑事責任が問われることもあると考えられます。実質的責任者の責任を問わない限り、再発防止には繋がりません。