斎藤兵庫県知事と木村熊本県知事では月とスッポン

今全国で話題の知事と言えば、パワハラ疑惑で県議会から不信任決議を受け辞職した兵庫県の斎藤知事(もう知事ではないが分かり易くするため知事と表記)と不適切発言を繰り返す熊本県の木村知事だと思われます。共に総務省出身の若手エリート知事です。斎藤知事のパワハラ疑惑は告発した県職員が自死したこともあり全国紙やテレビのワイドショーが連日取り上げたため、斎藤知事はすっかり悪人になってしまいました。一方木村知事の不適切発言は、今年の5月不適切発言で辞職した川勝元静岡県知事と似たものであり、その発言が生まれる幼稚性が話題となりました。これを見ると斎藤知事は救いようがないレベルで、木村知事はかわいいレベルのように思われますが、良く調べてみると全く異なる実体が見えてきます。

先ず斎藤知事のパワハラ疑惑ですが、これは県の元局長が退職前に斎藤知事の疑惑を書き連ねた書面(告発状。後日告発者は公益通報と主張)をマスコミに送り付けたことが発端です。この告発状には告発者の氏名も書かれておらず、証拠も添付されていなかったことから、マスコミは公益通報としては扱えません。このあと元局長は県の公益窓口に通報したようですが、これにも証拠が添えられていなかったことから県は公益通報とは扱わず、告発者の調査に着手し元局長にたどり着いたということです。その後県議会が百条委員会を設置し調査を開始しましたが、証言する前に元局長が自死したため疑惑の解明は頓挫してしまいました。百条委員会は県職員へのアンケートを実施し、アンケート結果にはパワハラを受けたという証言もいくつかあったようですが、多くが「聞いたことがある」という内容であり、いずれもパワハラで責任を問える内容ではありませんでした。知事と直接接する職員はわずかであることを考えれば、こういう結果になるのは当然です。

斎藤知事を巡る告発問題は、冷静に考えれば斎藤知事のパワハラや不正と認定するには無理があるにも関わらず、告発者が自死したことから新聞、テレビが飛び付き勧善懲悪ドラマ化しました。そのため斎藤知事は希代の悪人となってしまいましたが、最近のヤフコメを見ると斎藤知事の見直しが進んでいます。そのヤフコメのなかに次のようなコメントがありました。

「やはり斎藤さんには実績がある。 また、一連の対応を見ても鋼のメンタルなのは間違いない。 だからこそ抵抗勢力と戦える。

・1000億超えの県庁舎建て替えストップ

・知事の報酬カット(給与30%、退職金50%減額)

・高級車「センチュリー」を廃止

・職員OBの天下りを規制

・県の貯金33億円を127億円までアップ

・県立大学無償化

・私立高校の実質無償化

引き続き改革を推進してもらいたい」

要領よくまとめられており、コメントを書き込んだ人は行政に通じた人か優秀なビジネスマンだと思われます。これが事実なら斎藤知事は相当仕事ができる人です。これらのことをやるには予算の組み換えが必要であり、予算(担当業務・利権)を失うことになる県職員や県議、業者の激しい抵抗が予想されます。斎藤知事はこれを跳ねのけて実現しており、なかなかできることではありません。兵庫県立大学の無償化は、東京都立大学および大阪公立大学の無償化計画を出し抜いたものであり、東京都知事および大阪府知事は悔しさ一杯だと思われます。これについては「無償化の恩恵を受ける範囲が兵庫県内の高校卒業生の1.7%と一握りの人に限られる」との批判が多いようですが、これは教育費全般の無償化に向けて退路を断ったものであり、教育費全般の無償化に繋がります。最近の人口動態調査を見ると東京都と大阪府だけ人口が増えていますが、これは教育費無償化が進んでいることが要因と考えられます。子供を持つ親にとっては、お金がなくて子供を私立中高や大学にやれないということほど辛いものは無く、東京都や大阪府に住めばこの心配がなくなります。現在は兵庫県から大阪府への移住が進んでいると思われますが、斎藤知事の教育費無償化策によりこの流れが止まるとことになります。県立大無償化はそのような効果を狙った妙策であり、これを真っ先実現した斎藤知事は全国の知事の中でも優秀と言えます。

一方熊本県の木村知事ですが、就任が今年4月15日であるため特別な実績はなく、不適切発言だけが目立ちます。

・4月16日の知事就任式で

「野菜を売る人、牛の世話をする人、そうした方々のために全力で頑張るのが私たち県庁職員だと私は思っています」(川勝静岡県知事が辞任する原因となった発言を揶揄)

・5月1日木村知事が当選祝いで貰った胡蝶蘭を熊本市内の病院や福祉施設など7か所に配ったことに関して

「事務所を閉めるまで(残り)1日、2日という中で(コチョウランを)捨てたくないという思いから回れる範囲で預けにいった」「自宅が手狭で事務所にも置けず預けただけ。相手に利益を与える意図はまったくなかった」(「預けた」という言葉が子供じみていると批判された)

・5月1日水俣病の患者・被害者団体と伊藤環境大臣の懇談会の場で団体側の発言中環境省の職員がマイクの音を切り、懇談会の後に団体が環境省側に抗議したことについて、5月10日の定例記者会見で

「あの場で事実上つるし上げになっている。大臣も環境省も」(抗議を「つるし上げ」と表現)

・8月16日パリ五輪に出場した女子バトミントンの志田千陽選手、松山奈未選手および山口茜選手の3人が熊本県庁を訪問し木村知事に報告を行った場で、

「バレーのなんとかさんみたいにオリンピックが終わったら全て終わりじゃなく、みなさんには頑張ってほしい」(古賀紗理奈選手を「なんとかさん」とおちょくる。)

・熊本県庁で8月20日に初会合が開かれた「くまもとで働こう」推進本部の会議で、

「一般事務とかは、要はいらないんですよ。そういう若者を育てちゃいけないんですよ、僕らは。教育長に過激な言い方だけど、普通科なんかいらないと僕は思っているのね」「一般事務は全部AIが代行する。これから必要なのは、エッセンシャルワーカーだ」(介護職などが不足する状況を捉えて「普通科なんかいらない」と発言)

これだけ不適切発言が続くと、発言は木村知事の人格の発現・発露であることが分かりますから、こんな人を知事にしてしまった熊本県人の失望感は大きなものがあります。

更に行政能力に失望させる出来事が最近(10月10日)ありました。それは昨年9月に公益通報された熊本県旅行助成事業「くまもと再発見の旅」に関するもので、これについては本年4月第三者委員会が報告書を公表しました。それによると「公益通報では県庁幹部が助成金不正請求を見逃すよう指示したとなっている(録音テープがある)が、県の担当課が定めた要件が曖昧(担当者間でも理解が違う、業者に対して要件を通知した書面もないし説明会も実施していない)だったことから、業者の助成金請求は不正とは言えない。従って不正請求はないのだから、県幹部の不正見逃し指示はなかった」と結論付けています。この結論に従えば熊本県は不正請求があったとして返還させた約4,500万円を返還しなければならないことになります。

これについて木村知事は10月10日、この報告書を基に謝罪したうえで不正があったとして県に返還させた助成金の再返還については「要件は県が決めることになっており、それに基づいて県が不正請求があったと認定して返還させたのは妥当であり、再返還はしない」と述べました。これを見ると木村知事には論理的思考力がなく、かつ公平性も公正性も備わっていないことが分かります。
このように現在全国で有名な2人の知事を比較すると月(斎藤知事)とスッポン(木村知事)であることが分かります。