「管理部門余剰人員を IT 要員に育成」は IT 舐め過ぎ!

富士通は10月31日、国内の間接部門の幹部社員を対象に早期希望退職を募集し、応募者の多くが10月末で退職したと発表しました。退職者数は公表していませんが、退職金の積み増しなどの関連費用として200億円を2024年9月中間決算に計上したとなっていますので、1,000人程度ではないかと思われます(1人割増退職金2,000万円×1,000人=200億円)。募集の理由としては「デジタル化を支援するIT事業への転換を進めるなかで人材の配置を見直した結果、事業の再編や関係会社の統合などで間接部門に余剰が生まれたため」としています。

2018年10月26日の日経新聞には、富士通は「2020年度をめどにグループ全体で5,000人規模を配置転換する方針を示した。対象は人事や総務、経理などの間接部門で、成長分野であるIT(情報技術)サービス事業に振り向ける。研修を通じて営業やシステムエンジニアなどITサービスに関わる職種への転換を促す。」と書いますから、今回の退職募集には富士通の方針に変化があったことが伺えます。どういう変化かというと、間接部門の余剰人員を教育研修でIT要員に養成できるという判断から、それは難しいという判断への変化です。最近多くの企業で管理部門や営業部門の余剰人員を教育研修してIT技術者に育てるという報道が見られますが、これらの報道に関するヤフコメを見ていたら「ITを舐めすぎ!」という書き込みがありました。私も現在プログラム言語勉強をしていますが、プロのプログラマーやSEになるには相当の勉強が必要であり、本人の資質(数学がある程度できる)も大いに影響することが分かりました。私は法学部卒で法律や財務が基盤で、バイオや創薬の知識もありますが、プログラミング(ITの基礎)には数学的(理系的)素養が不可欠です。管理部門の人員をIT技術者に養成すると考えた人たちは、ワードやエクセル、パワーポイントなどを研修で習えば使いこなせるようになることから、IT技術者も社内研修で養成できると考えたのかも知れませんが、それは安易な考え方です。企業で使えるIT技術者を養成するには、高校や大学でのIT基礎教育と企業での実践教育が不可欠であり、管理部門の経験は邪魔になることはあってもプラスにはなりません。従ってIT技術者を増やそうとすれば、高校や大学でIT教育を受けた人材を採用し、実務で鍛えるしかありません。言われてみると当然のことですが、ITという言葉が一般用語化しているため、安易に考えられがちなように思われます。

管理部門の要員が多いのなら、今回の富士通のように退職を募集して減らし、IT要員は別途採用するしかありません。そういう方向への転換が伺える富士通の退職募集の記事です。