銀行生損保より先端技術者の報酬を高くしないと

11月4日午後3時48分H3ロケット4号機が種子島宇宙センターから打ち上げられ、防衛通信衛星を軌道に投入することに成功しました。ほぼ成功するとは分かっていても打ち上げの瞬間はネットでライブ映像を見ている私も緊張します。打ち上げてしまうと飛行軌道を示すコンピュータ画面を見ているだけですから何の感慨もありませんが、打ち上げ前のカウントダウンと現場への指示、説明に感動を覚えます。ロケット打ち上げの瞬間のために何千人という技術者が知恵を絞り、最新の注意を払ってロケットを作ったことを想像すると、技術者の偉大さが分かります。ロケット発射は技術者の偉大さを示すセレモニーにように思えます。

その他で私が技術者の偉大さを感じるのは、高層ビル、ダム、飛行機、工場のロボット、医薬品などです。高層ビルは設計者も凄いですが、あんな高所で材料を組み立てる現場作業員が凄いと思います。ダム工事もしかりです。飛行機はあんな巨大な物体が空を飛ぶ言うことが信じられません。工場のロボットは制御プログラムが凄いと思います。医薬品は副作用も多くちょっと眉唾ものだと思うものもありますが、人体の解明から始まって効くメカニズムも解明されているものもあり科学の最高峰と思わせます。

これらのものが今あるのは、長い間に渡って研究開発を継続してきたからであり、科学者や技術者には深い知見の蓄積が引き継がれています。その知見が形となった暁には十分に報われる必要があります。そう考えたときに世の中おかしいことに気付きます。

それは大した知見の蓄積もない銀行、証券、生保、損保、放送、広告代理店などの社員が高給を食み、科学者や技術者の待遇は恵まれていないからです。例えばメガバンク行員の年収は、30歳で1,500万円、40歳で2,000万円が相場で、証券や生損保はメガバンクと横並びです。これは金融庁が金融機関を社会のインフラとして保護していることから可能となっています。やっている業務は市役所と変わらなく、報酬と不釣り合いです。

私はこれらの金融機関社員の報酬を削って科学者や技術者に配分すべきだと思っています。日本人の所得が1990年頃から増えていないのは、輸出するものが無くなったからです。そのため外貨が稼げなくなり、国内の通貨流通量が増えないのです。韓国が1人当たりGDPで日本を抜いた原因は高い輸出割合(GDPの約42%)にあります。これはドイツ(同約48%)に次ぐ世界2位であり、輸出で稼いだ外貨がウォンに交換され国内に溢れ出ているのです。韓国は人口が少ない(約5,000万人)から国内市場だけでは豊かになれないと国家を上げて輸出を振興しています。日本も太平洋戦争後は同じ政策を掲げGDP世界2位になりましたが、バブル崩壊後この旗を降ろしてしまいました。それと同時にモノづくりも衰退し、科学技術が大切にされなくなってしまいました。その結果円安になっても輸出できるものが無くなっています。日本が豊かになるためには、輸出を増やすしかなく、そのためには世界の人が欲しがるものを開発するしかありません。そのためには科学者や技術者の待遇を良くすることが不可欠です。金融機関など文系職業の超過利潤を科学者や技術者に回す仕組みが必要となっています。