医療費を削って教育費に回すべき
2022年度の国民医療費は46兆 6,967億円、前年より1兆6,608億円、3.7%の増加と なっています。 人口一人当たりで見ると 37万3,700円であり、前年より1万4,900円、4.2%の増加となっています。このうち医療保険の割合は約5割であり、税金で4割が賄われています(1割は個人の窓口負担)。税金4割のうち国が2.5割、地方が1.5割となっています。税金負担の実額は約19兆円で、国が約12兆円、地方が約7兆円の負担となります。
何故ここで医療費を持ち出したかというと、医療費のうち税金負担部分をを削減して教育費に充てられないかと考えているからです。
今年3月の中教審で慶大の伊藤塾長が国立大学の授業料を150万円まで引き上げるべきだと主張し、東大が535,000円から625,000円の引き上げを決めました(来年4月から)。国立大学への交付金が減らされる中で物価が上昇し、国立大学は資金繰りに窮していますから、他の大学も追随したいのですが学生の反発を恐れ躊躇しています。そこで文部科学省は諮問委員会で値上げを決め、国立大学に一斉値上げを求める算段です。
伊藤塾長は150万円の根拠として「欧米の大学の最低授業料が約300万円であり、これくらいないと良い教育は出来ないから」と述べましたが、これは米国および英国の有名私立大学のことであり、欧州大陸のフランスやドイツなどは国立大学中心で無償となっています。無償となっている理由は、大学教育は国家の科学技術基盤を引き上げ経済繁栄のために不可欠だからとしています。これは日本の国立大学創設時の理念であり、不変の真理です。これが私立大学の乱造により私立大学の授業料が高くなったことから不公平とされ、税収不足に悩む政府が国立大学の授業料を現在の535,000まで引き上げました。この結果学生は授業料や生活費を稼ぐためにアルバイトに明け暮れ、学業が疎かになっています。その影響は理工系の学生にもっとも強く表れ、日本の製造業の衰退として現れています。日本の輸出商品を奪い取った韓国、中国、台湾の大学授業料は日本の半分以下であり、学生を大切にしています。これが技術力の差なって現れているのです。
今度は日本が韓国、中国、台湾を追いかける番ですが、これには国立大学授業の無償化(私立大学は半額化)が不可欠です。科学技術の発展なしには韓国、中国、台湾を抜くことは不可能です。当然無償化は大学理工科だけでよいのではと言う声が出てくると思いますが、その通りです。文系の授業は大教室や中教室での講義が中心であり、インターネットが発展した現在では大学に行かなくても自宅でネット視聴すれば十分です。そして多くのレポートの提出を求めれば、通学より遥かに学力が付きます。文系を通信教育に替え浮いた資金を理工系教育に回せます。さらに大学授業料を無償化するからには、大学が定めるレベルに達しない学生は卒業させないことができます。これで大卒の価値は格段に上がります。
この大学無償化の原資は医療費を削減して捻出することも考えられます。どこを削減するのかというと高額医薬品です。日本で保険が適用される医薬品の中で一番高額なのは約1億6,700万円、2番目は4,900万円などで1,000万円を超えるものが4つあります。完治するのなら保険適用する意義があると思いますが、中には抗ガン剤のように数日寿命が延びるというだけで承認されているものをあります。新薬となれば値段も上がりますが、数日の効果なら何も新薬を使う必要なないように思われます。保険収入が潤沢なら別にかまいませんが、保険収入が不足している状態ではこのような運営も仕方ないと思われます。これで減少した医療費を教育費に回した方がよいと考えます。医療費、特に高齢者医療費にお金を掛けすぎて未来に繋がる教育を疎かにするのは最悪と選択のように思われます。これは若者を大切にするか老人を大切にするかの選択でもあります。