弁護士コメンテーターはバッジを賭けてコメントしないと
斉藤兵庫県知事の失職と再選を巡る経緯は今後テレビドラマ化や映画化されことが予想される程ドラマチックなものでした。斎藤知事失職の原因はテレビが視聴率を稼げる構図に沿って情報を操作し、新聞もそれに乗っかって報道したからです。新聞やテレビの報道に対して多くの国民が不満を持っており、マスゴミという言葉が広く使われていました。それが今回爆発したように思われます。テレビの視聴者や新聞の読者は、テレビや新聞には正しいことを報道してくれることを期待していますが、今回テレビや新聞は情報を独占していることを利用して、斎藤知事が悪いという情報を一方的に流しました。その結果兵庫県民はこれを真に受けて斎藤知事を激しく非難しました。県議会はこれを利用し斎藤知事へ不信任案を可決しました。斎藤知事が議会解散ではなく自動失職し知事選に出馬することを選んだことから様子が変わってきます。議員の殆どが斎藤知事は議会を解散すると予想していましたから、斎藤知事のこの行動に不吉な予感を持った議員もいたかも知れません。そして斎藤氏の再選に向けた1人ぼっちの戦いが始まるわけですが、この頃からSNSでテレビや新聞が報道する事実が間違っていること、斎藤知事の3年間の実績が凄いことが発信され始め、理解者を増やして行きます。それは知事選開始により益々加速し、投票日前には再選確実なレベルに達していました。これは死刑執行間近の死刑囚が冤罪であることを知ったときに採る国民の行動に近かったと思われます。テレビや新聞の間違った報道に騙され斎藤知事を死刑宣告(失職)に追い込んでしまった兵庫県民の反省が込められた斎藤知事再選と言えるように思われます。
今回最も厳しく非難されているのはテレビのワイドショーですが、ワイドショーはこれまでも有名人のスキャンダルを虚実ごっちゃまぜで報道しており、斎藤知事問題も同じ感覚で扱っていたように思われます。斎藤知事失職まではワイドショーディレクターのシナリオ通りであり、ディレクターはほくそ笑んでいたでしょう。しかし選挙戦になってワイドショーに批判が向くとすっかり報道しなくなってしまいました。選挙期間中は一方的な報道はできない法的制約があるからと言っていますが、国政選挙では選挙中も報道しており違和感があります。やはり誤報道をしてしまったことの後悔から、この問題から逃げようとしたと考えられます。
ワイドショーには最近多くの弁護士がコメンテーターとしてレギュラー出演していますが、これらの弁護士がワイドショーの一方的報道を煽ったように思われます。殆どの弁護士コメンテーターが斎藤知事が悪いとし、法的争点の存在さえ指摘しませんでした。視聴者の中にはあの弁護士が言うのだから間違いないだろうと思った人も多いと思われます。これに対してSNSで個人が問題点を指摘し、斎藤知事は悪くない、または一方的に非があるわけではないと主張したことから、これを読んだ兵庫県民の間でSNSの主張も一理あるかも、もっとよく調べてみようという人が増えていきました。反斎藤派の人たちは今でも斎藤氏に投票した人たちはSNSに騙されたと主張している人が多いですが、SNSを丸ごと信じている人は皆無です。みんな真実を知る参考にしているだけです。従って読まれているSNSはどっちが悪いと感情的に主張したものではなく、その根拠となる事実を適示したものとなっています。即ちSNSが利用されているのは、自分が判断を下す証拠を探すためです。弁護士の仕事においても証拠が一番重要なはずなのに、ワイドショーに出演している弁護士コメンテーターは弁護士の習性を忘れ、ディレクターのシナリオに沿った発言に終始しています。このことに視聴者の多くが気づいていますから、ワイドショーを見てこれらの弁護士に弁護を依頼する視聴者はいないのではないでしょうか。本人はワイドショーに出演して名前と顔を売れば本業の弁護士業務に好影響が出ると考えていると思われますが、結果的には逆目に出ています(コメンテーターが本業で、弁護士は副業になっている弁護士も増えている)。これと同時に、このような弁護士の体たらくを見て法曹を志す人が減少することが危惧されます。最近の司法試験の結果を見ると、法科大学院入学者の2人に1人が合格するようになっており、法曹は人気職業ではなくなっています。地方の法学部生にとってはテレビ出る弁護士が憧れの対象であることが多く、コメンテーター弁護士は法曹志望者の夢を壊しています。弁護士コメンテーターは弁護士バッジを賭けてコメントすることが求められています。