斎藤知事当選はSNS以前に正義が斎藤知事にあったから
11月27日投開票の兵庫知事選で、議会から不信任決議を受けて辞職した斎藤元彦前知事が奇跡の当選を果たしました。当選確率0からのドラマチックな当選劇でした。この原因について様々な分析がなされていますが、新聞・テレビと言うこれまで絶対的に情報を握って来たオールドメディアがSNSと言う新興メディアに敗北したという論調が目立ちます。そして敗北したと言われた新聞・テレビは、選挙期間中は法律で報道が制約されており報道量が減ったことが原因、SNS情報はデマが多く信頼に値しない情報であり、これに選挙が影響を受けるのは問題であり何らかの規制が必要と主張しています。これに対してSNSでは、
・新聞テレビが選挙期間中に報道を控えたのを問題にしているのではなく、斎藤知事が辞職に至るまでの一方的報道(元県局長の告発が全て真実であることを前提に斎藤知事の辞職を迫る)が問題なのであり論点をすり替えている、
・不正確な情報があるのは新聞テレビも同じでありSNSだけを問題視するのはおかしい、
・新聞は広告主や情報源である政治家・官僚の意向に沿って報道し、これらの利益に反する報道はしないという偏向性がある、
という主張が目立ちます。
今回の斎藤知事勝利の原因はこんな単純な問題ではなく、斎藤知事の前に井戸県政が5期20年も続いており、その中で形作られた予算配分を斎藤知事が大幅に改めたこと、また井戸知事時代に出来上がった県庁職員人事の順番が斎藤知事によって変更されたことに不満を持った県議、県職員、業界関係者が一体となって斎藤知事追い落としを画策したというのが問題の本質でした。告発状を新聞社、県議、警察などに送付した県局長はそのメンバーの1人ですが、たぶん中心人物ではありません。中心人物は井戸時代に県庁幹部を務めた人物および県議の中にいると思われます。県局長が斎藤知事の追い落としに使えるテーマを把握できる立場にいたことから、告発文を書くことになったものと思われます。県局長は京大卒で人事部門も担当していたことがあることから、公益通報制度についても知っていたと考えられ、あの告発体裁では公益通報にならない(匿名であること、告発内容の証拠が添付されていないこと、告発窓口でないところにも送付していること)は分かっていたはずです。従って告発文を提出した3月の時点であの告発文が怪文書扱いされたのは当然と言えます。それが斎藤知事に渡り(県議からという報道と新聞社からという報道がある)、県庁内で調査されるようなったのは当然であり、当該局長に辿り着き当該局長が処分されたのも当然と言えます。処分後当該局長は同じ文書を県の公益通報窓口に提出しますが、これを公益通報として扱わないのも当然と言えます。
ここで県局長の告発文の内容を改めて見てみたいと思います。
(1)人事=ひょうご震災記念21世紀研究機構の副理事長2人が突然解任
(2)知事選=2021年知事選で幹部職員らが斎藤元彦氏の選挙を手伝い
(3)知事選=次期知事選に向けた投票依頼のため、商工会などに出向いた
(4)贈答品受領=地元企業からコーヒーメーカーやロードバイクなどを受け取った
(5)パーティー券=副知事らが斎藤氏の政治資金パーティー券を商工会などに大量購入させた
(6)優勝パレード=阪神・オリックス優勝パレード費用を信用金庫などから不正に集めた
(7)パワハラ=机を叩いて激怒したり、職員を怒鳴り散らしたりした
どれも私怨のフィルターがないと出てこない事項であり、知事を辞職に追い込むのは難しい内容です。例えば(1)については、斎藤知事が2人の副理事長を解任したことにショックを受けて五百旗頭理事長が急死した(通告の翌日)と言っていますが、これは斎藤知事が65歳超の天下りを廃止したための人事であり、これを五百頭旗理事長急死の原因と主張するのは乱暴ですし、公益通報の内容として妥当性がないのは誰でも分かると思います。元検察官の郷原信郎弁護士は6番だけ背任の疑いが生じるが、その他は公営通報に該当しないと言っています。本当に公益通報する気があったのなら、7つも上げず証拠がある1つか2つに絞ります。7つも挙げたということは、斎藤知事が気にくわない気持ちの表れと言えます。
これらについては県議会が設置した百条委員会が実施した県職員へのアンケートで実際に経験した、見聞きしたという声がアンケートに答えた人の約4割あったということですが、これも県職員の多くが斎藤知事追い落としに加担した証拠となっています。斎藤知事と仕事で接触する職員は幹部を中心に1割もいないと考えられますので、約4割いう数字だけでものこのアンケートに信頼がおけないことが分かります(アンケートは信頼性が薄く裁判上証拠にならないとされている)。
一方で斎藤知事の実績として挙げられるのは、
・1000億超えの県庁舎建て替えストップ
・知事の報酬カット(給与30%、退職金50%減額)
・高級車「センチュリー」を廃止
・職員OBの天下りを規制
・県の貯金33億円を127億円までアップ
・県立大学無償化
・私立高校の実質無償化
です(ヤフコメから)。
新聞テレビで一方的に悪人に仕立てられ、県議会から全員一致で不信任決議を突き付けられると普通の知事なら議会を解散するか、辞職し次の知事選には立候補しませんが、斎藤知事は議会を解散することなく辞職を選択し、しかも知事選に立候補することを選択しました。この時点で斎藤氏が次の知事選で再任される可能性は0%であり、誰もがこの選択を訝ったものでした。その後斎藤氏は1人で駅前に立ち再選に向けた動きを始めます。これを見た人たちが「報道される内容は間違っているのでは。正義は斎藤氏にあるのでは」と考え始めます。そう考えるとSNSの中には当初から「県局長の告発文は公益通報には当たらない」「この程度のパワハラはどこの会社であり、辞職させるまでのことでない」「おねだりと言っているは儀礼の範囲内だ」という声がありましたから、これらのSNSが拾われることとなり支持者を広げていきました。それを決定的にしたのは、斎藤知事が就任後3年間に行った改革が知られたからだと思われます。兵庫県民は井戸県政の問題点を承知しており、それを改革しようとする斎藤知事は兵庫県に必要な人物と判断したのです。
こう考えると斎藤知事の奇跡の再選は、SNS以前に「斎藤氏に正義があったから」ということになります。マスコミやネットで見られる斎藤氏勝利の原因分析には、いくらSNSを駆使しても正義がない限り当選できるわけではないという視点が欠けているように思われます。