日経の読者は企業広報記事になぜお金を払う?

日経電子版が100万部を超えたという報道です。「凄いな」と思うかもしれませんが、増加分紙の新聞が減っているはずであり、トータルでは減っていると思われます。2024年6月時点の販売部数を見ると、紙の新聞は1,375,414部と前年同月比192,767(-12.2%)減少しています。一方電子版の部数が97,609部増加し、合計すると2,346,952部となり95,158部(-3.9%)減少しています。紙の新聞が月5,500円(朝刊のみ)に対し、電子版は同4,270円からくるところの移行だと思われます。この間他の新聞社が8~12%減らしていることを考えれば、この移行作戦は大成功と言えます。この結果日経は、新聞の売上は減少しても利益は増加していると考えられます。というのは、紙の新聞は宅配が中心でコストかかるのに対し、電子版はネット経由ですから遥かにコストがかからないからです。コストから考えたら電子版の価格は今の半分でもいいくらいです。

それに日経電子版がもっと安くて良い理由があります。それは日経の記事は企業が広報として日経に流したものであり、本来なら日経は読者から購読料を取るのではなく企業から広報委託費を徴収すべき性格のものだからです。街中で無料で配られるフリーペーパーは事業者からの広告費で成り立っていますが、日経の事業はあれに似た内容と言えます。

例えば12月12日にサントリーが社長交代を発表し、その朝日経がスクープとして報道しましたが、サントリーはその日のうちに記者会見を開いています。要するにその日サントリーが発表することが決まっていたことを、ちょっと前に日経に書かせたものです。これは日経が200万人以上の読者を有していることから、広報価値が高いと考えてのことです。このように日経の記事は企業が広報の観点から流しているものであり、別に日経の記者が優秀で取材して入手した情報ではありません。同じ内容がほぼ同日には企業のHPに掲載されますから、その企業の営業担当者はその企業のHPを見れば同じ情報を入手できます。このように日経の記事はいずれ公知になるものであり、日経でないと入手できないものではありません。日経はいわば企業広報のまとめサイト的な存在と言えます。従って企業広報のまとめサイトを作り、それがサラリーマンに広く認知されれば日経の価値は無くなることになります。これなら人材採用などで多くの企業に出入りしているリクルートや記者を全国に配置している読売新聞などが勝てるような気がします。即ち、新聞の中で勝ち組と言われる日経も必ずしも安泰ではないと言うことです。

こう考える日経を取るのが馬鹿馬鹿しくなるはずです。日経をサラリーマンが取るのは、日経を読まないと必要な経済情報を入手できずライバルに負けるという強迫観念からであり、高い購読料払ってまで読む新聞ではないと言えます。