ロボットの密度を見れば中韓に抜かれる訳だ

国際ロボット連盟(IFR)が発表した2023年の国別ロボット密度を見て驚きました。1位は韓国で1,012台、2位はシンガポールで770台、3位の中国で470台、4位はドイツで429台、日本は5位で419台となっています。これを見てモノづくりで韓国、中国に抜かれた理由が分かりました。韓国、中国はロボットを増やしてモノづくりのレベルを上げていったのです。

ロボット密度は、製造業の就労者1万人あたりのロボット稼働台数を示し、製造業の自動化レベルを測るのに有効な指標です。大量生産の商品では多くの人手をかけて作るよりもロボットに作らせた方が品質が上がります。日本のモノづくりが優秀なことを表す言葉であったmade in japanはすっかり聞かれなくなり、made in koreaと入れ替わっています。韓国が日本の輸出品を奪い取って行った理由として低賃金が言われましたが、今では1人当たりGDPで抜かれており、給与所得も2割くらい韓国が高くなっていますから、妥当性がありません。韓国の方が競争社会であるからとも言われますが、競争社会になれば米国のようにモノづくりは廃れるはずですが、韓国は廃れていませんから、これも妥当性を欠くことになります。韓国が所得も上がり、競争も厳しい中でモノづくりが廃れないのは、ロボットの導入が多いためだと考えられます。ロボットなら人件費の上昇や人手不足、欠勤、品質のばらつきなどに悩まされる必要がありません。

その結果身近な電気製品であるテレビでは、韓国のサムスン電子とLGが欧米で高価でも売れていますし、冷蔵庫や洗濯機の評価も高いようです。スマホではサムスン電子のギャラクシーがappleのi-phoneと双璧をなしています。車についてもヒョウデ・起亜車はトヨタに負けない品質評価で、販売台数もトヨタに迫っています。これらの原因の1つは人口が日本の半分でも関わらずロボット密度は日本の2.5倍あることにあると思われます

これは中国がモノづくりで世界の輸出基地になった理由でもあります。確かの最初は人件費の安さと人手の多さが原因でしたが、今では人件費も上がり優位性も失われています。その結果外国企業の工場は増えていませんが、中国企業の工場が増えています。中国人はせわしくモノづくりに適した人種ではないように思われますが、最近は品質がどんどん向上しています。例えばテレビではこれまで品質が悪く安物の印象でしたが、最近は品質でも差が無くなったのに価格が安いとして世界中で売れており、韓国サムスン電子やLGを追い上げているようです。車でも電気自動車で攻勢に出ており、電気自動車の生産販売台数は世界1になっています。品質はどうかと言うとそれほど悪いという評判は聞きません。長い間中国で日本やドイツの自動車会社と合弁企業を運営しており、車造りのノウハウを吸収しているように思われます。それに中国のロボット密度の伸びが顕著であり、2023年には世界3位の470台(2019年度と比べると2倍以上)に達しています。日本が419台ですから差はたいしたことないですが、中国の人口が日本の約13倍であることを考えると、ロボット総台数では14倍くらい中国が多いことになります。現在のモノづくりでは、モノの品質はロボットの割合で決まりますから、モノづくりの品質でも日本は中国に抜かれたと考える方が素直です。

日本は人手不足と言いながら専業主婦が多い、103万円や130万円の壁があって働くことを控える人が多く、これらが解消されれば人手不足とは言えない状況です。そのためロボットの導入は今後とも緩やかになると思われます。一方韓国と中国にはこのような事情は無くロボットの導入を加速すると思われ、モノづくりで追いつくことはできないように思われます。そうなるといくら円安になっても輸出は増えず、その結果また円安になり物価が上がるという悪循環が予想されます。経産省は成功する見通しが立たないラピダスに4,5兆円の資金を投入するより、生産現場のロボット化に投入した方が有益です。