公職選挙法違反は刑事罰に相当する行為に限定すべき

兵庫県の斎藤知事の公職選挙法違反容疑の告発を神戸地検と兵庫県警が受理したという報道です。異例の速さと書いている新聞もありますが、有名事件であり神戸地検および兵庫県警としても何らかの判断を示さないわけにはいかないことから当然と言えます。捜査をして不起訴処分で終了です。告発者も検察審査会に審議を求めることはないと思われます。

斎藤知事の公職選挙法違反容疑は、PR会社の女社長がSNSを含む「広報全般を任せていただいた」と投稿サイトnoteに投稿したことから、選挙運動者への金銭提供などを禁じた公選法の買収罪にあたる可能性があるとされるものです。多分一般人はチンプンカンプンだし、選挙を何回も経験している人も良くわからない見解だと思われます。現行法で選挙運動の報酬が認められるのは、ウグイス嬢と呼ばれる車上運動員などに限られ、その他の人にお金を払えば買収となる可能性が出てくるようです。しかしSNSの威力が選挙運動として認識され始めたのは最近であり、特に今年7月の都知事選挙で泡沫候補だった石上伸二氏がSNSを駆使し3位に食い込んだことから、有力な選挙手段化しました。そのため11月の兵庫知事選ではSNS活用の巧拙が結果に大きな影響を及ぼすと思われていました。従って有力候補はSNSにつき誰かの指南を受けたか、陣営に専門家が参画していたと思われます。これを考えるとSNS戦略の企画立案を外部の業者に委託したら買収というのは選挙のルールとしておかしいということが分かります。公職選挙法が想定していない事態であり、今後ルールを整備しなければならなくなったというのが今の状態だと思われます。従って斎藤知事の容疑は公職選挙法が考えていた違反行為ではないことになります。公職選挙法違反に問うためには、事前に違反行為が明確であり、文書で候補者に配布され、周知徹底されている必要があります。ある行為が突然総務省や警察・検察の解釈で公職選挙法違反とされることがあってはなりません(罪刑法定主義に反する)。

そもそも選挙期間中に使われるお金は全て票の獲得に向けたもの(買収目的)ということが出来ます。例えばポスターの印刷は自分に投票してくれそうな社長の会社に依頼します(少なくとも他候補と親しい社長の会社には依頼しない)し、昼食でも投票してくれることを期待して食堂を選びます。ちょっとした買い物でもそうだと思われます。

また自分の後援会に入ってる人の会社に広報全般を委託しても買収の疑いが生じるのでしょうか。自分に投票することが確実であり、買収にはならないような気がします。米国大統領選の場合、当選した大統領の大口寄付者が外国大使に任命されることが多々ありますが、これなんか日本では贈収賄ですが、米国では当然のこととなっています。選挙は利害関係の衝突であり、利害が一致する関係者の間では買収は成立しないように思われます。日本の公職選挙法は候補者に高潔を要求し、選挙が利害関係の衝突、利害関係者の戦争であることを無視しているように思われます。従ってそういう現実も考慮し、あまり些細なことで公職選挙法違反に問わないようにする必要があります。重箱の隅をつつく様な公職選挙法の運用では、違反者も有権者も反省することは無く運が悪かったたで終わりです。公職選法違反は刑事罰が必要な重大な違反行為に限定すべきように思われます。