カイロスロケット失敗はカルロス・ゴーンの呪い
12月18日、民間初のロケット企業と謳われるスペースワンが打ち上げた小型ロケット「カイロス」2号機がまたも失敗しました。打ち上げ141秒後には第1段を分離、142秒後に第2段エンジンに着火、158秒にフェアリングを分離しましたが、打ち上げ80秒後に生じた第1段エンジンノズルの駆動制御異常により機体の飛行経路にずれが生じたため、破壊指令を出したということです。私もネットでロケット打ち上げ中継を見ていましたが、異常が生じたことは直ぐ分かりました。まっすぐ飛ぶはずの軌道が微妙にずれてぎくしゃくした瞬間がありました。「あれ、何か異常があったな。これはまた失敗だな」と思いましたが、そのまま飛び続けたのでびっくりしました。その後ロケットは破壊されたと聞いて納得です。
カイロスロケットの初号機は2024年3月13日に打ち上げられましたが、何と5秒後に爆発しました。私はこんなみっともないロケット打ち上げ場面を初めて見ました。原因は、第1段エンジンの推力が数パーセントほど不足していたことだったと発表されていますが、こんな初歩的なこともチェックできない状態で打ち上げたことに問題があります。その後の記者会見でスペースワンの豊田正和社長は「失敗とは捉えていない」「次の打ち上げを目指したい」と能天気なことを言っていましたから、「また次も失敗だな」と思っていました。
スペースワンは、2018年にキヤノン電子、IHIエアロスペース、清水建設、日本政策投資銀行などが出資して設立されており資本構成上は民間企業ですが、責任株主が見当たらず社長には元経産省審議官の豊田正和氏が就任していることから、実質的には経産省の子会社です。前回および今回の記者会見では経産省の局長がオンラインで出席し、経産大臣のビデオメッセージを放映していることもこのことを証明しています。豊田氏は日産の社外取締役を務めていたことがあり、カルロス・ゴーン追放(逮捕)の首謀者と見做されています。要するに今の日産の危機を作った戦犯の1人です。豊田社長については、まず技術系でないことと75歳と高齢であることに強い違和感を感じますが、それ以外にスタートアップ企業の社長は運を味方に付けられる人(悪いことをしていない人)でなければならず、豊田氏のようなゴーンの呪い(ゴーン逮捕は冤罪)を受ける人は不適任です(カイロスはカルロスと一字違い)。
豊田社長は今回の記者会見でも「失敗とは捉えていない」「早く次の段階に進めたい」と前回と同じことを述べており、親方日の丸の気楽さが見て取れます。こんな調子では次回も新たな問題が発生し失敗する可能性が高いと思われます。
スペースワン社のロケット打ち上げの連続失敗を見ると、同じく経産省の子会社ラピダスが思いやられます。ラピダスの場合東哲郎会長および小池淳義社長は民間人ですが、東会長が75歳、小池社長が72歳と高齢な点がスペースワンと同じです。この11月には元経産次官で岸田首相の首席補佐官を務めた嶋田隆氏が特別参与に就任しています(後ろ盾が甘利明議員(落選)から岸田前首相に交代)。これまで経産省が9,200億円の補助金を投入し、今後8,000億円の追加補助金、1,000億円の出資、銀行借入への保証などの形で4,5兆円の国費投入を計画しています。ラピダスが生産を目指す2nmの先端半導体は世界トップの半導体受託生産企業TSMCや同2位のサムスン電子も実現していない技術レベルであり、ぱっと出の企業が成功できるレベルではありません。スペースワンのカイロスロケット打ち上げより遥かに困難と言えます。カイロスロケット連続失敗がラピダスの未来を暗示しています。経産省は事業を舐め過ぎです。