検察事務官から検察官になれる制度が必要
最近犯罪が多くなっています。特に殺人事件が増えたように思われます。以前の殺人は恨みがあったとか、揉め事があったとか因果関係があるものが多かったのに対し、最近は闇バイトによる押し込み強盗殺人とか行き当たりの殺人が多くなっています。こんな状況ですから暴力事件や性被害事件などの刑事犯罪はこれ以上に増加しており、警察の逮捕者数や送検件数が大幅に増加しているようです。それは検察が不起訴にする事件が多いことから伺えます。私は熊本出身でよくネットで熊本のニュースをチェックするのですが、傷害事件や婦女暴行事件が不起訴になったというニュースを頻繁に見かけるようになりました。これは司法記者が「えー、これを不起訴はおかしい」という問題意識があって書いていると思われます。記事の内容を見るとこれで不起訴はおかしいし、こんなことをしていたら治安が悪化するのではないかと心配になります。尚これは熊本ばかりでなく全国的な傾向です。
そこでなんで検察は不起訴処分を乱発するのだろうと考えると、検察官の数が不足していることに行き当たります。その証拠として検察官の採用者数を見ると令和元年以降、65人,66人,71人,72人,76人と増えています。また高検の検事長人事を見ると東大や京大卒が少なくなっており検察官の人気が無くなると同時に退職(弁護士転身)も増えていることが伺えます。起訴すると書類づくりや訴訟で時間が取られることから、検察官が足りなければ起訴する案件を絞ることになります。その結果が不起訴処分の増加となって現れているように思われます。
この見立てが当たっているなら、検察官を増やすことが必要となります。司法試験合格者は毎年1,500人を超えており、弁護士業務を生業にするのは厳しくなっていることから、検察官の採用自体は困っていないと思われますが(ただし採用者の実力は低下している)、若手の退職者は増加しており、30代、40代のベテラン検事が不足しているように思われます。これを採用で補うのは困難であり、新しい検察官人事制度が必要となります。
そこで考えられるのが検察事務官から検察官になれる制度を創設することです。検察事務官は、検察官を補佐し、又はその指揮の下犯罪の捜査から裁判の遂行、そして刑の執行に至るまでの一連の刑事手続に関する業務を行いますから、刑事事件については検察官に近い実務能力が付くことになります。そのため現在でも検察事務官から副検事に昇格する制度があるようです。しかし副検事は検察官の職務を代行できないことになっており(実際は代行させている模様)、検察官不足の解決にはならないようです。そこで副検事から検事になれる制度を設ける必要があります。検察官は司法試験に合格していますが、やっている業務は刑事事件の処理であり、刑事事件だけに限れば検察事務官から検察官に準じる実務能力がある人が出てきます。国税専門官は23年以上国税専門官の業務に従事すれば税理士資格を得られますから、これと同様検察事務官も勤務年数に応じ副検事、更には選抜で検事になれる制度を設けることは何ら問題ないと思われます(ただし弁護士にはなれない)。今後検察官志望者は少なくなりますし、志望者の質も低下します。また検察官の職務に耐えられず弁護士に転身する人も増えると思われることから、この制度の創設は避けられないと思われます。