国立大学授業料は理系だけでも無償化すべき

2023年度の日本人1人当たりGDPは33,848ドルで、DECD加盟38か国中22位、21位の韓国(35,563ドル)を2年連続で下回ったということです。上位の順位と金額は下記の通りです。(単位:ドル)

ルクセンブルク 128,423  アイルランド 104,118  スイス 100,325  ノルウェー 87,570  アイスランド 82,543 アメリカ 81,861  デンマーク 68,442  オーストラリア 66,630  オランダ 64,572  オーストリア 56,040  スウェーデン 55,202  ベルギー 54,780  カナダ 54,201  ドイツ 53,550  フィンランド 52,987  イスラエル 52,643 イギリス 49,464  ニュージーランド 48,006  フランス 44,691  イタリア 39,003  韓国 35,563  日本 33,849

これを見ると欧米の豊かさが分かりますし、韓国に抜かれていることはテレビに映る韓国の街の綺麗さや韓国人のセンスの良い服装、k-popの隆盛などを見ると納得できます。

これを嘆くよりなぜこんなことになったかを考え、対策を立てることが重要です。私が考える原因は日本人の学力低下です。特に学力の上位層が居なくなり中間層に吸収されてしまったように思われます。それは大学教育が軽視された結果だと考えられます。小中学校は最低限の学力を付けることが重視されており、個人間で大きな差は生じません。それを逆手にとって私立の小中学校も増えていますが、実体は低学年での大学予備校化であり、ここで身に付くのは試験問題を解くノウハウのみです。高校はそれこそ大学予備校であり、自分で考える能力を付けるところではありません。そうなると大学のみが自分で考える能力(真の学力)を付けるところとなりますが、多くの学生は卒業証書を貰うことが目的であり、学力養成の場とはなっていません。それは企業が大学での学力を重視しないことも原因になっています。この結果多くの学生は学力が低いまま就職し、就職後は盲目的に企業のやり方に従うことになります。こうして考えない日本人が大量に養成され、現状を打破できない日本となっています。

国内産業はこれでも支障ありませんが、国際競争に晒される産業、とりわけ輸出企業は大問題です。日本は戦後欧米から製造技術を導入し、これにまじめな国民性と安い賃金が加わって世界屈指のモノづくり国に成長しました。Made in japanは世界で高品質の代名詞になりました。この結果輸出が増え獲得された外貨が円に転換された結果、1980年後半バブルが発生しました。ここまでの輸出の増加は、欧米技術の模倣に基づいたものであり、日本人が発明・開発したものは余りありませんでした。というより発明・開発するような主体的に考える日本人は殆ど育っていませんでした。そしてバブル崩壊による税収不足を補うため、受益者負担を名目として国立大学授業料を上げ続けました。この結果学生はバイトに明け暮れ勉強に集中できなくなり、大学の研究者も研究資金が削られ研究に専念できなくなり、大学そのもののレベルが低下していきました。

1人当たりGDPが韓国に抜かれたのは円安の影響もありますが、最大の原因は輸出で韓国に太刀打ちできないからです。韓国はGDPのうち40%強は輸出によっていますが、日本は20%弱です(トップはドイツで50%弱)。韓国が世界一の輸出国であるものは半導体、テレビなどいくつもありますが、日本は思い当たりません。日本では、韓国は低賃金を武器に輸出品を日本から奪い取ったと言われてきましたが、今の状況をみればそうではないことが分かります。私も韓国製品をいくつか使いましたが日本製品より品質が格段によい印象です。韓国が日本から学んだことは間違いありませんが、韓国は更にレベルアップさせています。一方日本は1990年代の学力(技術)水準のままですから、今では相当韓国に引き離されています。この韓国を中国と台湾が猛追し、追い越しにかかっています。韓国の報道を見るとこの2国への警戒感が溢れていますが、日本への警戒感は全くありません。韓国では日本はもう終わった国になっています。

こんな韓国を再び1人当たりGDPで追い抜くためには、大学教育を強化するしかありません。大学の中でも理工系です。理工系の学生はアルバイトせずに実験や実習、研究に専念できる環境が不可欠です。中国は優秀な技術者を世界から招聘していますし、有力大学の理工系の学生は実質学費無償となっています。これに対抗するためには日本の国立大学も理工系は学費無償とすべきだと思われます。一方国立文系はネットの発達で通学の必要はなく通信教育に移行します。これで浮いた費用を理工系に投入できるほか優秀な文系の学生が理工系に移ることが期待できます(尚私大への財政支援については、楽天の三木谷社長が日本維新の会の私立高校無償化を批判しているように、私立学校の独自性を失わせる危険があるので抑制的であるべきです)。