日産は内田社長に代えて関元専務の社長就任があるかも

ホンダと日産が統合交渉を始めましたが、交渉の成否は日産の再建にかかっています。日産の最大市場である米国では、日系企業が収益源とする中で日産は在庫整理(約2か月分。トヨタは約1か月分で正常)に追われ利益を出せずにいます。そのため日産は米国工場とメキシコ工場の操業を今年3月まで約2割落とすという報道です。日産が昨年11月17日発表した2024年度9月中間決算(連結)では営業利益が329億円と前年同期比3,038億円も減少しましたが、販売台数は160万台と前年同期比2万台しか減少していませんから、日産が販売店の在庫を多額の販売奨励金を出して販売していることが伺えます。売れない原因は、米国で人気があるHVやPHVを日産は持っていないことにあるようです。

日産としてもこの状況は構造的なものと判断し、生産設備の約2割縮小と従業員約9,000人の削減が行うと発表しています。しかしまだ表立った動きはなく、今期中の完了は疑問視されます。2018年11月に日産会長カルロス・ゴーン氏が東京地検特捜部に逮捕されて以降、西川社長、内田社長と言う日本人社長となりましたが、共にゴーン氏のような経営手腕はなくゴーン氏が作った貯金を食い潰しています。2人とも購買部門出身ということですので、経営で自ら主導権を発揮できるのは仕入価格の削減だけです。日産は昨年仕入先への支払代金を割戻金の名目で減額していたことが問題となりましたが、これは内田社長主導で行われたと考えられます。ゴーン氏は生産部門出身であったことから、工場のリストラと仕入価格の引き下げの両方を強力に進めました。生産部門の、たくさんのモジュールや部品を組み立てて完成車に仕上げる業務フローは経営に似たところがあり、生産部門出身の社長は成功者が多い印象です。外れが多いのは開発部門出身者で、これは専門分野を深く掘り下げることは得意でも全体を見て采配するのは得意ではないためと考えられます(マツダのロータリーエンジン開発で有名な山本健一社長はこのタイプだった)。こう考えると日産は西川社長の後内田社長ではなく生産部門出身の関潤専務が望ましかったように思われます。関専務は生産部門の管轄の後日産で米国と並ぶ重要な市場であった中国法人の社長も務めていますから、ゴーン氏も評価していたと思われます。しかし西川社長辞任後の社長指名に当たった指名委員会は、ルノーのスナール会長が委員長であったことから、共同購買などでルノーとの共同作業が多かった内田専務を社長に指名したように思われます。内田社長は旧日商岩井に入社し日産には中途入社(36歳)ですから、求心力もなくリーダーシップもありませんから、ゴーン氏と数名の幹部が方針を決め、それ以下の社員は割り振られた業務(コミットメント)を忠実にこなすシステムになっている日産の経営者には向いていないことは明らかでした。従って今日の日産の状況は内田社長指名時点で予想されていました。

これが結果となって現れているのが日産の現状ですから、内田社長を交代させないと再建は期待できません。本人は、ホンダとの統合交渉は自分しかできないとの思いで退陣など全く考えていないと思われますが、日産の指名委員会では交代に向け次の社長の選考に入っていると思われます。日産の幹部の特長は指示待ち族であることであり、現在日産に必要とされている経営者は、ゴーン氏に負けないリーダーシップを発揮できる人であり、日産社内からの昇格はないと思われます。現在日産の株式式の約36%はルノーが保有(このうちルノー本体の所有割合は約15%で、残りの約21%は信託銀行名と言われているが、議決権としては一体として見るべき)しており、次の社長指名に当たってはルノーの意向を無視できません(現在指名委員会委員長はスナール会長ではなくソニー出身のアンドリュー・ハウス氏になっている)。そうなるとルノーも良く知っている2名が浮上します。1人は元日産専務関潤氏であり、もう1人は昨年まで日産COOを務めたアシュワニ・グプタ氏です。グプタ氏は購買部門が長かったようなので、西川社長、内田社長の失敗があり無いと思われます。そうなると関氏が有力な候補となります。関氏は日産で生産部門が長く、メーカー社長の成功事例に当て嵌まりますし、ニデックで約2年社長を務め永守会長から経営の厳しさを学び、2023年1月からは自動車の受託製造を目指す鴻海精密工業のCSO(最高戦略責任者)に就任し、鴻海流の経営ノウハウを学んでおり、期待できます。今回の日産とホンダの経営統合交渉入りは、関氏が日産に支援(資本参加)を打診したことが契機となった、その後関氏はフランスに飛びルノーにルノー(および信託銀行)保有日産株の購入を打診したと報道されており、関氏は日産再建に自信があるように思われます。日産再建に最も関心を持つのは約36%の株式を保有するルノーであり、ルノーとしてもここは関氏に託すしかなくなっています。ということで、私は次の日産株主総会までに内田社長の退任、関氏の社長就任が発表されると予想します。尚この場合関氏の社長就任はあくまで日産再建のためであり、鴻海との提携は意味しません。日産再建が可能となればホンダとの経営統合に進む可能性が高いと思われます。ただし経営再建の中で工場の一部を鴻海に売却する、電気自動車の製造を鴻海に委託するという決断はあり得ると思います。アップルもi-phoneの製造は全面的に鴻海に委託しており、このモデルの有効性は十分立証されています。