野党は政府提出60の法案全部に修正を加えること
政府・与党は1月24日召集予定の通常国会に2025年度予算案や税制関連法案のほか、年金制度改革など60本ほどの法案を提出する見通しとのことですが、野党は昨年11月の衆議院選挙で多数を獲得したのですから、この全部に少なくとも修正を加えるか、一部廃案にし、国民の負託に答えて欲しいと思います。
国民民主党は昨年11月の衆議院選挙で所得税の非課税枠103万円を178万円に引き上げるとの公約を掲げ、7議席から28議席へ4倍増という大躍進を遂げました。そこで年末の税制改正交渉で自民党と合意が成立しましたが、合意書には「『103万円の壁』は国民民主党の主張する178万円を目指して来年から引き上げる」と書かれていました。これを見た人は誰もが「これって玉虫色の決着じゃん。来年はいくらに引き上げるか書いてない」と思ったはずです。私は去年の5月の政治資金改革問題で日本維新の会(維新)が馬場代表と自民党岸田総裁の党首会談で、旧文通費改革について「使途公開と残金返納を義務づける立法措置を講ずること」と盛り込んだ合意文書を交わし、維新が自民党の規正法改正案の賛成に転じ成立後、立法措置は先延ばしになり笑い者となったケースを思い出しました。あのときも「いつまでに」という期限がなく、子供の約束(効力がない)のようなものでした。これを契機として馬場代表および維新への信頼は一挙に低下しました。国民民主党と自民党の合意には、肝心の「来年はいくらまで引き上げるか」の合意がなく、自民党は少額の引き上げでお茶を濁す可能が大でした。案の定自民党から出てきたのは103万円を123万円に引き上げるという案であり、「やっぱしな」と思った人が多いと思われます。自民党としては国民民主党が粘ればもう少し引き上げる腹積もりはあったと思われますが、交渉に当たった古川代行は席を蹴ってしまい、そのままとなってしまいました。
103万円の壁の交渉においては、補正予算の成立を人質にとっており、合意に来年度引き上げ額を明記することが可能でしたが、国民民主党がそれをしなかったことは、自民党との間に裏合意(少しでも上がればOK)があったことが伺われます。そうとでも考えないとこんな詐欺みたいな合意書締結するはずがありません。この前に維新の前原国会議員団代表が小野寺自民党政調会長に高校無償化の検討を要請し、小野寺政調会長が前向きな発言をしたことから、自民党は今後国民民主党に代えて予算額が低い(高校無償化の予算は約6,000億円)維新と協力し、予算の成立を図るつもりとの見立てもあります。たぶんその通りで、103万円の引き上げ額が期待外れだった国民民主党は予算案に反対し、高校無償化の予算措置をすることを条件に維新が賛成に回り、来年度の予算が成立することが予想されます。
これだと野党が分断されている印象ですが、これまで自公だけで決められてきた予算に野党の声が反映されるようになっただけでも進歩と言えます。
ただし法案により多くの修正を加えるためには、野党で協調し、ある党が修正を実現したい法案に他党は反対しないこととする必要があります。自公と野党のある1党が賛成、他の野党は反対と言う形で法案が成立するのは避ける必要があります。これは今年7月の参議院選挙の1人区で野党統一候補を擁立する上でも大切です。そうして政府提出予算全部に何らかの修正を行い、自公を過半数割れにすることのメリットを分かってもらう必要があります。