実はホンダも崖っぷち

日産とホンダの経営統合の話がネットを賑わしています。車の保有者が多いことと大企業のサラリーマンにとっては他人事と思えないためと思われます。ネットでは、日産は崖っぷちの会社であり統合すればホンダが危なくなるという声が多いですが、実はホンダの四輪部門も崖っぷちです。「え、嘘。ホンダは今中間期良い決算だったじゃん。」という反論が聞こえそうですが、実は四輪部門はヤバい状況です。

ホンダの2024年9月中間決算を前年同期との比較で見ると次の通りです。

中間期                2023年9月      2024年9月                    差異

売上収益   9兆6,093億円    10兆7,976億円   +1兆1,882億円(+11.2%)

営業利益    6,965億円(7.2%)  7,426億円(6.9%)    +460億円

売上収益は11.2%伸びていますが、円安の影響が大きいと思われます。注目すべきは営業利益率が7.2%から6.9%に落ちている点です。

ホンダは二輪、四輪、金融サービス、パワープロダクトの4つの事業に分けて収益管理をしていますが、これを見ると四輪部門の苦境が見えてきます。

部門        二輪         四輪     金融サービス   パワープロダクト

売上収益    1兆8,107億円  7兆1,305億円    1兆8,145億円     2,032億円

営業利益    3,258億円(18.8%) 2,580億円(3.6%) 1,627億円        -40億円

(前年同期)  2,533億円      3,013億円

利益を伸ばしているのは二輪部門(+725億円)であり、四輪部門は落としている(-433億円)ことが分かります。売上高の伸びも二輪部門+15.1%、四輪部門+12.3%と二輪部門が大きくなっています。四輪部門の利益率の低さ(3.6%)は目覆うばかりです。中間期の売上収益(四輪)がホンダの3分の1(2兆1,649億円)にも満たないスバルの営業利益が1,837億円(利益率8.5%)ですから、ホンダの四輪部門が如何に儲かっていないか分かります。

この原因は自動車の販売台数を見ると分かります。前年同期の約193万台に対して今中間期約178万台と約15万台減少しています。これは中国で約24万台減少したのが最大の要因のようです。中国については日産よりひどい状況です。この結果2023年度の販売台数が411万台のところ今期は380~390万台と予想され、減少幅も日産と近くなっています。ホンダと日産が統合すれば販売台数約735万台(2023年度ベース)で世界3位の自動車グループになると報道されていますが、今期ベースで見れば約680~690万台ベースになると予想されます。これが今期だけの現象であればよいのですが、今後とも続くと考えられ、底が見えません。ホンダと日産の統合は、崖っぷち同士のメーカーが統合するとどうなるかの壮大な実験になると思われます。ホンダとしては、持株会社の下に4つの部門を事業会社としてぶら下げ、二輪部門の利益があるうちに四輪部門の合理化、電気自動車の育成を進めた方が良いように思われます。ホンダと日産が統合するのは、ホンダの二輪部門が日産まで支えることを意味します。二輪部門には酷な話です。