国際企業はドルベースの賃金体系へ移行
賃金引上げのニュースが相次いでいます。これを見ると優良企業の初任給は月30万円台に突入しそうです。3年くらい前が20万円ちょっとでしたからこの2年で7~8万円上がった印象です。1980年代後半のバブル時代は、賞与ははずみながらも初任給はそんなに上げなった印象がありますから、現在の初任給引き上げには好業績以外の要因があることになります。
それは賃金体系の国際化だと思われます。今回ユニクロも3月以降に入社する新卒社員の初任給を3万円引き上げ、33万円にすると発表しました。年収ベースでは約10%増の500万円強となり、更に入社1〜2年目で就く新人店長の月収は2万円引き上げ41万円とし、年収ベースで5%増の約730万円になるとのことです。ユニクロの賃金引き上げの理由は、柳井正会の「グローバル水準の少数精鋭の組織へと変革を進めるため」と言うコメントに集約されています。即ちユニクロが世界各地に出店し海外の売上が大きくなり外国人従業員が増えた結果、賃金体系の統一化が必要となったからです。同じ仕事をしていながら国によって賃金が大きく違うというのでは、活力や一体性が保てません。そうなるとドルベースの世界統一賃金体系が必要となってきます。例えば米国ニューヨーク中核店の店長の年収が10万ドルなら、ロンドンやパリ、東京の中核店の店長も10万ドルとすれば公平感が出てきます。ユニクロが出店する国を生活水準によっていくつかのグループに分け、そのグループ間の統一賃金を作り、そのグループ間の店を移動しても同じ年収となるようにすれば、いつでも移動可能となります。それに日本に本部がありながら、日本人幹部より米国や欧米の幹部の方が年収が多いというみっともない状態も解消できます。
三井住友銀行や明治安田生命、東京海上日動も初任給30万円超への引上げを発表しましたが、これらも世界の同業各社の給与体系を意識したものと考えられます。従って新入社員ばかりでなく全社員の給与が大きく引き上げられるはずです。メガバンク、生損保の年収は同水準となっていますので、30歳代で2,000万円台、40歳代で3,000万円台の年収水準に乗ってくると思われます。商社についてはこれを上回る水準となり、30歳代で3,000万円台、40歳代で4,000万円台の年収水準を目指すことになります。ただし、会社と個人の業績給の割合が高くなり、会社の業績が良い時は年収も高く、業績が悪い時は年収も低い、同期の中でも実績(稼ぎ)に応じ年収が4,5倍違うようになります(商社は明言している)。ようするに会社が個人事業主の集団になるということです。こうなると稼げない人は辞めるし、年収に不満な人(もっと高くて良いはずと考える人)は転職するとこになり、欧米並みの人財流動化が進むことになります。
一方国内が事業基盤である企業は、先細りの将来しか見えず、大幅賃上げは難しいばかりかリストラで延命を図ることになります。この場合ホンダと日産の経営統合のように一旦図体をデカくしてリストラをやり易くするというやり方も増えそうです。いずれにして国際企業と国内企業では4,5倍以上の賃金格差(年収格差)が普通になりそうです。