半導体も中国企業で値崩れ必至
世界の半導体企業の株価が変調になっています。サムスン電子の2024年12月末の株価は2023年12月末と比べて約3割安くなっています。業績が悪いのかと思たらそうではないようです。2024年12月期の連結決算速報値は、売上高が16%増の300兆800億ウォン、営業利益が前の期比5倍の32兆7,300億ウォン(約3兆5,000億円)となっており、株価下落の原因は昨年の決算ではないようです。韓国の政情不安(ユン大統領の戒厳令発布)が原因との説もありますが、戒厳令を速やかに撤回させたことは韓国の民主主義が機能した証拠として評価されており、ここまで下げる原因とはなりません。サムスン電子だけでなく世界の半導体企業の値動きが激しくなっており、半導体需要の見通しが揺れているようです。
日経の記事では、生成AI用のデータセンター向けが成長する一方で、電気自動車(EV)やスマートフォン向けは停滞すし、本格的な回復局面に向かうのは今年10月以降になるとの見通しを紹介しています。
サムスン電子の場合、今後中国向け輸出が減少するとの予想が大きいようです。韓国の昨年1~11月の地域別半導体輸出額で中国の占める割合が2020年度の40.2%から33.3%に6.9%下落しました。香港も同じ期間に20.9%から18.4%に2.5%減少しており、香港に輸出した半導体の90%以上が中国に再輸出されることから、中国の減少幅は35%程度になる予想されます。これは米国が中国への半導体輸出を制限した結果、中国が自国の半導体企業に補助金を付けて生産能力を強化し代替できるようになったためと考えられます。これからは中国半導体企業が国内用に生産した汎用半導体が安価を武器に海外に輸出され、サムスン電子やSKハイニックスの取引先を奪っていくことが危惧されています。これは鉄鋼やテレビ、電気自動車で起こっていることであり、実現性は高いと思われます。その他コロナ蔓延で半導体の供給が不足したことからサムスン電子のほかSKハイニックス、キオクシア、TSMC、ソニーなど世界の多くの半導体メーカーが設備の増強に乗り出し、生産能力は相当大きくなっています。これらの効果が今年あたりから出てきて、一時的に生産過剰になるのは避けられないと思われます。それでも需要がなくなるわけではないので、倒産する半導体メーカーは出ないと思われますが、これまでのような高収益は享受できなくなると思われます。この影響が一番大きく出るのは半導体メモリー世界3位で、東芝から分離され経営基盤が弱いキオクシアになりそうです。