nidecによる工作機械メーカー統合は良いこと
モーターで有名なnidecが工作機械メーカー牧野フライス製作所にTOBを宣言しました。nidecは同じく工作機械メーカーTAKISAWAにもTOBをかけ、2023年11月成功させています。TAKISAWAは売上高約280億円、営業利益16億円と中堅企業ですが、牧野フライスは売上高約2,253億円、営業利益約163億円(2024年3月期)と大企業に入ります。買収価格もTAKISAWは約166億円でしたが、牧野フライスは約2,600億円近くに膨らみます。どちらも自己資本比率が高く(TAKISAW約42%、牧野フライス約61%)現在良好な経営状態です。ただし将来を見通すと不安が大きいと言えます。nidecの工作機械部門の売上高は、直近決算期で約1,200億円と言うことであり、牧野フライスとの関係では小が大を飲み込む形となります。しかし実態は2兆3,842億円(2024年3月期)による買収であり、仕方ないと言えます。買収されると牧野フライスの経営陣が工作機械部門をマネジメントすることになると思われることから、実体は牧野フライスによるnidec工作部門の統合と言えます。
日本の工作機械業界のトップ企業はDMG森精機で売上高5,394億円、営業利益479億円(2023年12月期)となっており、牧野フライス買収後のnidec工作機械部門の売上高(約3,500億円)を遥かに引き離す業況です。ただし自己資本比率は約30%であり、財務内容は脆弱となっています。nidecの永守社長は、中国の機械工作機メーカの成長を考えると1兆円の売上が必要と言っており、次は牧野フライスと同規模のオークマ(時価総額約2,400億円)がターゲットになると予想されます。オークマは自己資本比率70%を超える優良企業ですが、売上高は2,300億円と中途半端です。オークマを加えるとnidec工作機部門の売上高は約6,000億円とDMG森精機を上回ってきます。ここで次はDMG森精機がTOBのターゲットになると予想されます(時価総額約3,300億円)。DMG森精機は、日本の森精機とドイツのギルデマイスターグループ(DMG)が2016年に経営統合してできた会社であり、規模拡大の必要性についての理解はあるように思われます。DMG森精機では財務力が弱くTOBを実施できないことから、財務力のあるnidecが実施するだけであり、実体は日本の工作機械メーカーの統合であり、統合後はDMG森精機が経営の中心になることを考えれば、DMG森精機経営陣にとっても悪くない統合と言えます。こういう方向に行かないと日本の工作機械メーカーは中国勢の台頭で先細りとなるというのは永守会長の言う通りであり、日本の工作機械メーカーは永守戦略に乗るのがよいように思われます。今回のような経営統合は、日本の多くの業界で必要となっています。