広報からの連絡待ちの日経が読売に完敗!

1月24日AM5:00発出の読売オンラインが「ホンダと日産の経営統合に向けた協議を巡り、三菱自動車は合流を見送る方向で調整に入った」と報じました。発出時間を見ると満を持しての発出だと思われます。この記事を見て日経の慌てぶりが見に浮かびました。なぜならこういう経済情報の第一報(特ダネ)は日経と相場が決まっていたからです。そこで日経はどう出るのだろうと注目していたら、同日AM9:02 日経電子版で

「三菱自動車は24日、ホンダと日産自動車が検討している経営統合への枠組みについて一部報道が合流を見送りと報じたことについて、「決まったという事実はない」とするコメントを出した。現段階で様々な可能性を検討しているとした上で、「伝えるべき情報があれば、適切なタイミングで知らせる」とした。加藤隆雄社長兼最高経営責任者(CEO)は24日、「何も決まっていない」と報道陣に語った。「いろんな意見があるので調整している段階」と説明した。」

という記事を発出しました。「まだ決まっていない情報だ」と言っているように見えますが、「誤報だ」というニュアンスが感じられます。日経は昨年12月18日日産とホンダが経営統合に向けて協議に入ると特報(正式発表は12月23日)しており、本件報道においては絶対的主導権を持っていました。その際日経は、三菱自動車の合流は既定路線のように扱っており、統合に参加しないことは想定になかったように思われます。従って読売の報道については誤報とのスタンスで裏取りに向かったことが伺えます。

その後日経は、同日14:34発出の日経電子版で次のような記事を発出しています。

「ホンダと日産自動車の統合を巡り、統合の前提となる日産の具体的な再生計画の策定に時間がかかっている。米国やメキシコ工場で人員削減をする案があるが、ホンダに詳細を提示できていない。経営統合の行方が決まらないため、三菱自動車も参画方式を固められない状況になっている。」

要するに日産の再建計画が固まらないことから、三菱自動車は統合への参加決定を先延ばしにしたという論調です。

これに対して他紙は、読売が報じた内容で次々と報じました。他紙は読売の報道をそのまま報じたのではなく、裏取りを行ったうえでの報道です。ロイターは関係者3人から確認を取ったとしています。最後に報じたのは時事通信で2,3行の短い記事となっていましたから、裏取りに時間が掛かったものと思われます。

こういうことで読売の取材力と日経の悪あがきが目立ちましたが、これは読売が経済分野を強化していることと日経の企業広報部からの連絡待ち体質の弊害が現れたと見ることができます。読売は昨年12月17日、米ダウ・ジョーンズ社と法人向けデジタルメディア「DOW JONES 読売新聞 Pro」を来春創刊すると発表し、日経の牙城に参入することを発表しました。それより前の11月28日には、2025年3月より日本の株式市場を代表する333銘柄で構成する新たな 株価指数「読売株価指数」(読売333)の算出・公表を開始すると発表し、現在スタンダードになっている日経225への挑戦を表明しています。2024年6月の新聞販売部数を見ると読売は約585万部と1強の状態ですが、前年同期と比較すると約7.6%減少しています。一方日経は、紙媒体は約137万部で前年同期比12.2%減少していますが、電子版が約10万部増加しており、合計では約234万部と3.9%しか減少していませんから、紙媒体が電子版に移行していることになります。これは経済情報なら電子版への移行が進みやすいことを意味しています。ならば読売が経済情報を強化するのは当然と言えます。

今後読売が日経の厚い牙城に戦いを挑むことになりますが、読売の強みを生かせば一定の成果は出せると思われます。どういう強みかというと、多くの記者を抱えていることです。読売は社会部や政治部に多くの記者を抱えていますが、これらの記者が入手した経済情報が経済部の記者に上がるシステム(記事を書いた経済部の記者と情報を入手した他部の記者の評価点を半々にする)にすれば、日経を上回る経済情報を掲載することが出来ます。一方日経は、企業広報が当日または近々発表する記事を先行して掲載する仕組みになっており、記事が企業広報臭く「またやらせ記事か」と感じる読者も少なくありません。読売が企業広報を通さない独自の取材で得た経済記事を数多く掲載できれば、日経の牙城を切り崩すことも十分可能なように思われます。