北九州市は熊本より工場立地に適する
1月22日、日産自動車は電気自動車(EV)向けの電池工場を北九州市若松区の響灘エリアに建設することを発表しました。日産自動車から発表された計画の概要は
・工場建設予定地:北九州市若松区響灘エリア
・敷地面積:約15万㎡
・投資総額:1,533億円
・建設開始予定:2025年度
・稼働開始予定:2028年度
・雇用創出:約500名
となっています。総投資額は1,533億円と北九州市では過去最大の投資ということです。
昨年7月31日には、半導体の組み立て工程を受託する台湾の日月光(ASE)グループが北九州市若松区の市有地約16万㎡を取得すると発表しており、これに次ぐ大規模工場の誘致です。北九州市は1901年に官営八幡製鉄所が作られてから鉄鋼都市として栄えましたが、その後製鉄所の老朽化に伴い廃止され、人口もピークの106万人(1979年)から減り続け現在は約92万人になっています。それでもTOTO、安川電機、三井ハイテック、タカギ、黒崎播磨などのメーカーが本社をおいており、製造業の基盤は日本でも屈指です。私は以前投資の仕事(ベンチャーキャピタル)をしており、投資先を求めて日本の多くの町を訪れましたが、北九州市ほど製造業に適した町はないように思われました。大小さまざまなメーカーがあり、何かを作ろうとしたら作れる会社が必ずあります。それも相当高いレベルです。かつ道路も広くよく整備され、都市高速道も発達しており、移動や輸送に便利です。深い港湾の存在は北九州市発展の原点であり、更に24時間離発着可能な海上空港もあります。従って北九州市は工場立地のインフラが整っていると言えます。
そんな北九州市から工場が出ていく(廃止される)だけで新たな進出が無かったのは、暴力団工藤会の存在があったからと思われます。工藤会は街中で頻繁に殺傷事件や抗争事件を起こし、武器として手投げ弾やロケット砲も登場していました。これが嫌で撤収した企業も多いと思われます。しかし今では県警の壊滅作戦で工藤会も町中から姿を消し、平和な町になっています。
臨海部の工場地帯を取り巻くように商業施設や住宅があり、通勤時間も短く生活にも便利です。従ってAESや日産が進出するのは当然と言えます。現在九州では熊本県菊陽町に台湾TSMCの半導体工場ができ、ここに素材やサービスを提供する企業の進出が相次いでいますが、道路の整備が追い付かず渋滞に悩まされています。熊本県は現在急ぎ整備を進めていますが、最低でも4,5年はかかりそうです。また空港が遠い、道路が混むという問題も抱えており、熊本市が都市高速を計画していますが、こちらは完成までに10年以上かかりそうです。菊陽町周辺では用地も不足し、地価も高騰していますが、北九州市は埋め立て地や工場撤収地を中心に安い用地がまだたくさんあります。今後北九州市が台湾企業の新たな進出地になる可能性は十分あります。