フジテレビは放送業界の腐ったミカン

フジテレビの問題が世間を賑わしています。この影響でフジテレビでは今期CM収入が約233億円減少し、決算は赤字になる模様です。ただしフジテレビの持株会社であるFMHは、稼ぎ頭である不動産事業の利益でこれをカバーし、約98億円の黒字決算を維持できるとしています。フジテレビは好調な時代が長かったので、そのときの利益で不動産を取得し、不動産事業を強化してきたようです。TBSや日本テレビも似たような事業構造です。だから1年くらいCM収入がなくてもびくともしません。この収益構造を作り上げた最大の功労者はマスコミや一部社員から退任を要求されている日枝取締役相談役(87歳)であり、この自負の下自分から退任することはないと思われます(ただし今年の株主総会で承認される見込みがないため退任)。

一方今回の問題をきっかけにフジテレビの悪しき体質が暴かれています。女子アナを芸能事務所やスポンサー企業の接待に駆り出していたことの他、関連会社や下請け業者に対する対応が酷かったとも言われています。また盟友であるはずの広告代理店からも「売り子」扱いと悪口を言われており、孤立無援の状態です。

フジテレビの今の状況を見て、山一證券(山一)や日本長期信用銀行(長銀)の倒産を思い出しました。前述のようにフジテレビは内部留保もあり、親会社であるFMHの資産内容が厚いことから倒産することはありませんが、山一や長銀と同じく政府により保護された規制業種(業界)です。山一は大蔵省や日銀から箸の上げ下げまでチェックされ、倒産に至るようなことをする余地は無かったように思われます。しかし損失飛ばしという破廉恥な取引を行って倒産に至りました。こうした規制業種では政府が潰れないような仕組みを作り保護するため、経営が甘くなってしまいます。その影響はこの状態を一番謳歌(享受)した企業に現れます。それが山一であり長銀でした。私は長銀と関係がある会社にいたことがありますが、長銀の行員は秀才の大学生がそのまま年をとったような人が多く、仕事の練度は大変低いものでした。それでも約1,500人の行員で約15兆円の資金を運用していることから、1%でも1,500億円の利ザヤ収入があり、高給を謳歌していました(地方銀行は同じ人員で1兆5千億円を運用)。私はその前に大手メーカーにいましたが、社員の練度は2倍で給料は3分の1でしたから、「凄い世界があるものだ」「このまま退職まで行ければ羨しい限りだ」と思ったものです。そしたらバブルが崩壊し、あっという間に倒産しました。当時の融資は値上がりした土地を担保に融資し、その資金が土地に回りまた値上がりし、それを担保に更に融資額を膨らませるという馬鹿でもできるやり方で、高等な融資技術(審査技術)は全く不要でした。この頃は全ての銀行が同じであり、長銀だけの問題ではありません。長銀は戦後産業復興のため基幹事業会社専門に融資を行う銀行が必要して制定された長期銀行法に基づき設立された3つの銀行(日本興業銀行は普通銀行から転換。長銀と日本債権信用銀行が新規設立)の1つです。資金は預金ではなく債権を発行して集め、大手企業(なりそうな企業)にだけ融資をしていました。そのため普通銀行のように融資先を開拓する営業(どぶ板営業)はなく、大企業が事業計画を基に融資を求めてやってくるのが通例でした。またこの場合設備投資の融資であり、資金繰り用の融資ではなかったため、日々の資金繰り表を審査することはなく資金繰り表を読めない行員も多かったように思われます。

このような規制業種(法律で特権が与えられた業種)においては、政府が手厚く保護し潰れないようにする(儲かるような仕組みを作る)ため、知恵を絞る、ハードに働く必要がなく、それに安住する企業が生まれます。それは2位以下の企業であり、証券業界3位の山一、長期信用銀行業界2位の長銀がこれに該当します(倒産はしていないが損保業界2位の損保ジャパンも)。これはミカンを箱で買うとたいてい1個腐ったミカンがありますが、あれに似ています。フジテレビは、テレビ業界の腐ったミカンです。