年金1.9%増では米値上がり分も賄えない

来年の年金支給額は物価上昇を考慮し今年度から1.9%引き上げられるとの報道ですが、コメや野菜などの生活物価の値上がりを見ると算定方法がおかしいことと思われます。

ある資料による老齢基礎年金(国民年金)の平均支給額は月5万6,428円、厚生年金の平均支給額は国民年金分を含めて月14万4,982円となっています。この結果夫がサラリーマンで妻が専業主婦の場合、2人の年金収入は平均月20万1,410円となります。この支給額に対する1.9%は、それぞれ1,072円、2,754円、3,824円となります。1人の生活費で考えると、コメの価格が約6割上がっており標準的な銘柄の5k袋入りで約1,300円の値上がりです。1人で月10kg必要であり、月約2,600円の支出増加となっています。その他の食費がキャベツや卵などの値上がりで月約2,000円、電気代が月約1,000円上がっていることを考えると、これだけでも約5,600円の支出増加となります。食費の場合同居家族が増えるとほぼこれに比例して増えます。

こう考えると1.9%の引き上げでは物価上昇の穴埋めにはならないことが分かります。これは年金支給額改定の元となる物価上昇率の算定方法がおかしいためと思われます。2024年度の消費者物価上昇率は2%半ばとなっていますが、コメが6割以上値上がりしていることやキャベツ、卵などが倍以上値上がりしていることを考えると、全く辻褄が合いません。どうも消費者物価上昇率の算定では生鮮食料品を除いていることが最大の原因のように思われます。また最近の値上げは、容量を減らして価格を据え置くものも多いですが、この場合買う回数が増えるため支出は増えますが、消費者物価の算定には加味されていないのではないでしょうか。これらも加味しないと生活実感に沿った消費者物価指数にはなりません。また購買頻度と消費者物価算定商品の構成割合が釣り合っていない(購入頻度が低い商品が高い構成割合を占める)こともあるのではないでしょうか。

最近の報道を見ると大手メーカーの労働組合は来季の賃上げとして月1万2,000円を要求するところが多いようですが、物価の上昇を考えると最低ラインと言えます。最近の物価上昇は、バブル崩壊後世界の物価上昇(賃金上昇)に取り残された日本の物価が世界水準に鞘寄せする現象であり、世界水準の物価に達するまで続きます。政府は物価上昇に応じた賃上げ(取引価格の引上げ)を法制化する必要があると思われます。