天下りは乞食みたいなもの
今話題のフジテレビの持株会社フジメディアホールディング(FMH)の社外取締役に菅首相時代の内閣広報官で、それまでは総務省で通信放送行政畑を歩み総務審議官(次官クラス)までなった山田真貴子氏が就任していることが注目されています。山田氏は内閣広報官時代に菅首相の長男が就職していた東北新社から接待を受けていたことが判明し、辞職しました。東北新社は映画の制作や配給、TV番組やCMの制作、プロモーション事業が本業であり、元来総務省とは利害関係がなかったのですが、衛星放送事業に参入したことから総務省との折衝が必要となったようです。菅首相の長男は菅首相が総務大臣のとき大臣秘書官をしていたことがあり、総務省にも人脈があったようです。2016年7月から2020年12月にかけて、計13人の総務省職員が東北新社から合計39件の接待を受けており、このうち菅首相の長男が同席していたのは半数超の21件でした。山田氏は総務審議官だった2019年11月6日 東北新社社長、幹部ら4人(菅首相長男を含む)から1人当たりの飲食単価7万4,203円の接待を受けたことが明かになりました。この問題に関して山田氏は衆議院予算員会に参考人招致されましたが、菅首相の長男とは以前名刺交換をしたことがあると答えながら、会食の場にいたことは印象にないと答え、ちぐはぐと批判されました。その後NTTが長らく総務官僚を接待しており、その中に山田氏が含まれていたことから再度追及されることとなりましたが、入院療養を理由に辞職しました。山田氏は「飲み会は断わらない」が自分の仕事の流儀と述べており、接待についてもこの延長上で応じていたようです。山田氏の「飲み会は断らない」という流儀は偉くなるために不可欠の武器であり(でもやり続けることは難しい)、入省以来これをやり通したことは非凡と言えます。ただしこれは凡人の武器であり、才能ある人は使いません。
山田氏は小柄な可愛らしい容貌で好きなタイプでしたが、これらの接待が明かとなってからなんだかさもしい人のように思えてきました。総務省の放送通信行政出身者は退職後放送業界の企業に天下りすることが多く、山田氏もすぐ決まるだろうと思っていたら、昨年の株主総会前FMHの社外取締役に就任すると報じられました。これはFMHのドンと言われる日枝取締役相談役の引き(同じ早大OB)のように思えました。
今回フジテレビが記者会見で失敗(テレビカメラを入れなかった、出席者を制限した、答えられる内容まで答えなかったなど)したことから、ネット上では元内閣広報官だった山田氏の職務怠慢、役立たずとの声が飛び交っていますが、もともと広報の専門家ではなく内閣広報官の仕事は決定事項のブリーフィングに過ぎません。従ってFMHも広報的知見を期待したわけではなく記者会見について山田氏に相談することも無かったと思われます。だから批判は当たらないのですが、ネット民には山田氏には接待まみれという印象があり、叩きたくなると思われます。企業が官僚を取締役などに招くのは、官僚在職中に便宜を図ってもらったお礼、監督官庁との交渉を有利に進めるため、または単に退職後の食い扶持を与えるため、のいずれかです。一番多いのは最後の「食い扶持を与えるため」だと思われます。要するに天下りは乞食みたいなものと言えます。