ホンダはトヨタグループに入るのがよい
日産とホンダが統合交渉を中止することになったようです。原因については、ホンダが提案した日産子会社化は日産として受け入れられなかったためと言われています。ホンダが日産の子会社化を提案したのは、日産の再建計画の作成が遅く、かつ出てくる内容がどれも不十分なものだったため、ホンダが主導しないと統合の効果は発揮できないと考えたためと言われていますが、実際はルノーが持つ日産株式約36%をホンダが取得する決心をしたためと思われます。日産とホンダが経営統合するためには両社の株主総会の承認が必要ですが、承認要件は株式総数の3分の2以上の株式を持つ株主の賛成です。と言うことは、ルノーが反対すれば日産の株主総会で承認を得ることはできません。日産はホンダとの統合交渉入りについて事前にルノーの承認を得ていなかったようで、統合交渉入りの報道を受けルノーは「ステークホルダー(利害関係者)として最善の利益になるようにあらゆる選択肢を検討する」と表明し、不満を露にしています。その後今年1月に入りホンダが日産にルノーが保有する日産株式の問題を解決するよう要請したという報道がありましたので、ルノーは日産株式をホンダに買い取るよう要請したのではないかと思われます。日産は来季1兆円を超える借入金の返還や社債の償還を控えており、日産としては買い取れません。そこでホンダは自社で買い取ることを決断したものと思われます。この場合買取る株式は約36%ですが、これだけでも日産はホンダの実質子会社となります(重要な経営判断はできなくなるから)。日産としてはルノーの子会社が嫌で現在の状況(ルノー本体の所有割合は17.05%、残り18.66%は信託銀行)にしたのに、これでは元の木阿弥です。ならば統合交渉は中止すると考えるのは無理もないと言えます。
こうなると経営危機とも言える日産と単独での生き残りは難しいと思われるホンダの今後の展開が気になります。日産については、台湾鴻海が協業を申し入れたとかルノー保有株式の取得に動いているなどの報道がなされていますが、ホンダについては無風状態です。それは、ホンダは今期1兆円を超える利益が予想されており、当面経営不安はないからです。それでも今後の電気自動車化やソフトウェア化を考えるとどこかと連合を組まないと生き残りは難しいのは間違いありません。
ホンダは昨年11月まで米国GMと電気自動車の開発で協業していましたが、中止となったようです。その直後GMと韓国ヒョウデとの協業が報道されていますので、GMが販売台数で世界3位となったヒョウデに乗り換えたものと思われます。電気自動車化やソフトウェア化においては、共通の部品やソフトウェアを使う自動車が多いだけ有利ですから、GM(約600万台)としては約400万台のホンダより約700万台のヒョウデと組む方が有益です。これからホンダの次の展開が見えてきます。次にホンダが組み相手はGM/ヒョウデ連合を上回る販売台数となる自動車メーカーということになります。そうなるとフォルクスワーゲンかトヨタしかありません。市場が競合しない利点をとればフォルクスワーゲンとなりますが、フォルクスワーゲンはスズキに約20%出資した後子会社化しようとした過去があります。フォルクスワーゲンは少数出資による協業はなく(効果が出ない)、過半数出資による子会社化か、完全子会社化を要求することになります。これはホンダが望むところではないと思われます。そうなるとトヨタとの協業しか残らないことになります。そしてトヨタとの協業はホンダに取り理想的と言えます。お互いにぶれない技術開発をしており、協業すれば新たな技術的知見を入手できます。HVやPHV、電気自動車やソフトウェアでも独自の技術開発を進めていますが、両社の技術が融合すれば更に良いものが出来上がること間違いありません。それに電気自動車用バッテリーやトランスアクスル、半導体、ソフトウェアなどを共通で使用できるようになり、コストが下げられます。トヨタとホンダは水素エンジンの開発でも競っていますが、これも両社の開発部門を統合した方が開発スピードが速まります。更にホンダはビジネスジェット事業を行っており、成熟した自動車ビジネスに取って代わる可能性があります。この事業はトヨタにとっても魅力的であり、トヨタの参画を得れば旅客機の開発製造への進出も可能となります。
トヨタとホンダの協業の仕方とすれば、トヨタとスバル、スズキ、マツダのように相互に少数の株式を持ち合い、独立性を尊重する方式が考えられます。この場合ホンダは、持株会社のもと二輪事業会社、四輪事業会社、ビジネスジェット事業会社、パワープロダクツ事業会社を置き、トヨタは四輪事業会社に10%、ビジネスジェット事業会社に49%出資します。これでホンダはトヨタの後ろ盾のもと安心して強みを発揮できることになりますし、日本の自動車産業はほぼ1つの企業集団に統合されることになります。