「楽しい日本」石破首相の頭の中はフジテレビ?

「通常国会が開幕した1月24日、石破首相は初めての施政方針演説で「これからは一人一人が主導する『楽しい日本』を目指していきたい」と述べました。急に出てきた言葉で違和感を覚えた国民が多いようです。「楽しい日本」が意図する内容は、すべての人が安心安全を感じ「今日より明日はよくなる」と実感できる社会、だそうです。まるで昭和の高度成長期のようなスローガンですが、今はあの頃と背景が大きく異なります。あの頃は人口も増え、若い人たちは金の卵の言われ、求人が求職を大きく上回り、三種の神器(電気洗濯機、電気冷蔵庫、白黒テレビ)や3C(color TV、cooler、car)が普及しました。確かにあの頃は「今日より明日はよくなる」と実感できる社会でした。石破首相はあの頃が青春時代だった人なので、その再現を夢見るのは分かるような気がします。しかし問題は実現可能性であり、実現手段です。石破首相は急速に人口減少が進む日本の現状について「地域の活力、経済の活力が低下している。」という認識の下「地方創生を起動し、東京の一極集中を是正し、多様な国民の幸せが実現できる日本を作っていく」としています。石破首相は首相になる前から「内需中心」「地域分散型」経済を主張しており、これは一貫しているように思われます。問題は、この考え方で日本を再生できるかということです。

結論から先に言うと、この考え方では日本の再生は不可能です。日本が経済不振に陥ったのは、日本の経済力と乖離した円高により輸出力が落ち、国内(内需)中心の経済活動になっているからです。その証拠にGDPは1990年頃の約600兆円から横這いです。国内の消費力は限られておりGDPが拡大することはありません。一方中国やインド、東南アジア経済は急拡大しており、ここに輸出する商品があればGDPは拡大します。韓国はこれに乗じ輸出を拡大し、今では1人当たりGDPで日本を抜いています。韓国のGDPに占める輸出の割合は40%を超えており、国内消費に近い額を輸出しています(日本は16~18%)。韓国の輸出主導経済は、日本が戦後目指した経済成長戦略であり、これが成功した日本は1980年世界第二位のGDP大国になりました。これが米国の圧力により為替を円高に誘導され、日本で製造しても価格が高くなったため工場の多くが海外に移転しました。それと同時に製造業が衰退し、輸出できる商品が無くなってしまいました。そうなると国内の消費で経済を回すしかなくなり、横這い経済となります。これがバブル崩壊後の経済実態です。これを打破するには、また戦後の輸出主導経済に戻すしかありません。幸い労働者の賃金も韓国や台湾以下になり、コスト的には十分に競争できるレベルになっています。問題は、バブル崩壊後税収不足を補うため、国立大学授業料を15倍(36,000円→540,000円)に引き上げたため、大学理工系の学生が学費を稼ぐためアルバイトに追われ、学力が落ちていることです。中国では理工系学生の学費は実質無料、韓国と台湾では日本のほぼ半分であり、日本が大学理工系の学生を大事にしていないことが分かります。石破首相は慶大卒ですので国立大学授業料には興味がないと思いますが、日本の製造業を支えているのは国立大学理工系の学生です。従って日本が輸出を増やし豊かになる(楽しい国になる)には国立大学理工系の強化(大学授業料も無償化)から始める必要があります。特に地方経済の振興を図るには、科学技術の拠点として地方国立大学の理工学部を強化する必要があります。ここから始めないと石破首相の言う「内需中心」「地域分散型」経済は実現不能です。こんな状況で「楽しい日本」という言葉を使う石破首相は、「楽しくなければテレビではない」とうそぶき今日の堕落を招いたフジテレビと重なります。