社外取締役に会社の運命を委ねるなんて馬鹿げている

ホンダとの経営統合に失敗した日産の内田社長が辞任する見通しと報道されています。ジェレミー・パパンCFOを暫定CEOに選任し、後継社長の選任を進める方針とのことです。パパン氏は、日産の最高意思決定機関であるエグゼクティブ・コミッティ(EC)メンバーの一人で、昨年11月のCFO就任前まで業績悪化の主因である北米事業トップであったことから、訝る声も多いようです。こんな中暫定CEOになるのはホンダが日産の子会社化を提案した際に「子会社化されてもホンダとの統合交渉を進めるべきと主張したことが指名委員会メンバーに評価されたから」(日産関係者)と言われていますが、実際は現在日産の最大課題である資金繰りを担当しているためと思われます。

この報道を掲載したヤフーニュースのコメント(ヤフコメ)には、日産の取締役構成に多くの批判が寄せられています。日産の取締役は12名で社外取締役が8名を占め、全員日産と業務上の関係を有しない独立社外取締役とされています。社外取締役は、日本人5名、外国人3名となっています。日本人は木村康氏(元エネオス社長会長)、井原慶子氏(元カーレーサー)、永井素夫氏(元みずほ信託銀行副社長)、朝田照男氏(元丸紅社長会長)、得能磨利子氏(元ルイビトン・ディオール・フェラガモジャパン社長)で、外国人はベルマールデルマス氏(元日本ミシュランタイヤ会長)、アンドリューハウス氏(元ソニーコンピュータエンターテインメント社長)、ブレンダハービー(IBMディレクター)氏です。これに日産関係者4名(内田社長、坂本副社長、ドミニク・スナール氏(ルノー会長)、ピエール・フルーリョ氏(ルノー社外取締役)が加わります。この顔ぶれを見ると井原氏を除けば経営経験者であり重厚なメンバーと言えます。ただし社外取締役全員が自動車メーカー経営の素人であり、彼らが日産の重要事項を決定するには無理があるように思えます。社外取締役は全員が独立社外取締役となっていますが、例えば木村氏は自動車に使うガソリンを製造販売している会社の元経営者ですし、永井氏は日産のメインバンク出身、朝田氏は日産と取引関係が深い商社出身、ブレンダ氏は日産とコンピュータ関連取引があると思われるIBM在籍中など独立とは言えないし、むしろ利害関係者ということが出来ます。事実日産とホンダの経営統合破談を審議した取締役会では永井氏が強く統合を主張したと言われており、これは日産や日産と取引が深いマレリに多額の貸付金を有するみずほ銀行の立場を代弁したものと考えられます。永井氏と真っ向から対立したのがルノーのスナール会長と思われ、日産の株式を約36%有するルノーの立場を代弁しています。このように日産の取締役会は利害関係者と自動車メーカー素人で構成されており、日産にとって一番良い決断ができる体制になっていません。ホンダの子会社になるか破談にするかと言うような究極の選択を迫られると経営に責任を負えない社外取締役としては、ホンダの子会社になるというドラスティックな判断に与することが不可能です。従って現状維持の破談という結論になったのは当然と言えます。

このように社外取締役が多い取締役会構成は、重大な意思決定には不向きな制度と言えます。なぜならその後の経営執行に自らが加わるわけではないから、責任が持てないからです。やはり会社の命運を決める経営判断は、会社と運命を共にする社員出身の取締役が多数を占める取締役会でないとできません。学者の考える理想論を制度化した現在の社外取締役会制度は、会社を強くすることに繋がらず見直しが必要です。