日産の再建は日産生え抜き外国人に委ねられた

日産は3月11日新しい経営体制(4月1日付)を発表しました。内田誠社長が退任し、現在チーフプランニングオフィサーを務めるイヴァン・エスピノーサ氏がCEOに就任。合わせて副社長の星野朝子氏、中畔邦雄氏および坂本秀行氏の3人が退任します。一方外国人幹部は全員留任したことから、経営の主導権がルノーに移ったと考えられました。しかしこれらの外国人幹部の経歴を見てみると、そうではないことが分かります。エスピノーザ氏は大学卒業2003年にメキシコ日産に入社していますので日産での社歴は20年以上になり日産生え抜き社員と言えます。今回CEOとの噂もあったギョーム・カルティエ氏(チーフパフォーマンスオフィサー、アフリカ・中東・インド・ヨーロッパ・オセアニアマネジメントコミッティ議長、グローバルマーケティング・カスタマーエクスペリエンス担当)も大学卒業後1995年にフランス日産に入社していますので、日産での社歴は約30年になり日産でも古手の社員と言えます。中国マネジメントコミッティ議長のスティーブン・マー氏も大学卒業後日産に入社して以来日産一筋です。財務責任者(CFO)を継続するジェレミー パパン氏は、ドイツ銀行、リーマンブラザーズ、野村証券を経てルノー・日産の合弁会社、ルノーを経て2018年に北米日産に入社していますので、日産での社歴は約5年であり、エスピノーザ氏、カルティエ氏、マー氏の中では一番日産での社歴が短く、最もルノーとの繋がりが強いように思われます。アメリカズマネジメントコミッティ議長のクリスチャン・ムニエ氏も留任ですが、ムニエ氏はローバーやメルセデスを経て2003年に欧州日産に入社、2019年まで日産で経営幹部を務め、同年にFCA(フィアット・クライスラー)に転じ、2021年にはステランティスのエグゼクティブに就任、今年1月日産のアメリカズマネジメントコミッティ議長に就任していますので、日産出戻りOBです。このように新しく日産の経営を担うこととなった外国人幹部は、パパン氏を除き日産生え抜きの外国人と言える実体です。いずれも1999年にゴーン氏が日産社長になってから入社した人たちであり、ゴーン氏の薫陶を受け、ゴーン氏によって幹部に引き上げられたと考えられます。日産は1998年11月にゴーン氏が逮捕された後西川社長、内田社長と日本人CEOが2代続いたわけですが、いずれも上手く行きませんでした。内田社長についてはルノーのごり押しで実現したようであり、就任時点でこのような結果が見えていたように思われます。西川社長、内田社長は共に購買部門担当役員として実績を上げたようです。自動車メーカーの利益源は製造、購買、販売であり、ゴーン氏は製造と購買部門は日本人でも良いと考えていたように思われます。製造はまじめな日本人に合っていること、購買は仕入れ先が日本の企業であり日本人に値引き交渉をさせた方が効果的だからでしょう。販売については、ゴーン氏は日本市場を捨て北米と中国市場に注力する戦略を取りました。北米には自らスカウトした幹部を配し、実質的にNO2の位置付けだったと思われます。ゴーン氏にスカウトされ長い間北米販売責任者を務めたのがホセ・ムニョス氏であり、2018年の北米販売台数は190万台に達しています(2023年は126万台)。ムニョス氏はゴーン氏逮捕(2018年11月)後韓国ヒョウデの国際販売責任者にスカウトされ、ヒョウデの販売台数を世界3位に躍進させ、その功績で昨年ヒョウデ初の外国人CEOに就任しています。もう一つの注力市場である中国については、同じアジア人である日本人を経営者に据え、社長候補と言われた関元専務や内田社長も中国法人社長を務めています。これを見ると日本人が日産の社長(CEO)になるとすれば中国市場で販売実績を上げるしかありませんが、中国での販売は2018年の156万台から2023年には79万台まで減少しており、最近も前年同期より20~30%減の月が続いています。このため中国事業の責任者を日本人からマー氏に変えたくらいですから、日本人が社長に就任する目は無かったように思われます。

こう見てくると日産が経営陣を日本人から外国人に切り替えたのも無理はないように思われます。外国人経営陣と言ってもルノーから派遣された幹部ではなく日産生え抜き社員であり、日産自身による経営再建と言えると思われます。これは外国人生え抜き社員による日本企業の経営再建として注目に値するケースと言えます。