国立大学理工系だけは無償化しないと製造業が滅びる
米国ではトランプ大統領が輸入品に高関税をかける政策を実施していますが、これは海外に脱出した米国製造業を国内に回帰させることと、海外から米国に輸出している海外製造業の工場を米国内に作らせるためです。米国はこれまで利益の大きい金融や通信サービスで世界を支配し、利益の少ない製造業は他国に任せる政策を取ってきましたが、中国が製造業を強化し、鉄鋼・造船・自動車などで世界一の生産国になったことから、製造業の重要性に気付いたようです。それに強い製造業がないと戦争になったとき大きな影響がでます。特に米国の場合、国民生活に必要な製品の多くを輸入するばかりでなく産業機器などの部品も輸入していますから、これらの輸入が途絶えると国民生活に大きな困難が生じます。戦争になったときに備えてとは言っていませんが、ロシア・ウクライナ戦争やイスラエル・パレスチナ戦争を見ると、戦争に備えた国造りを重視するのはどこの国でも当然と言えます。
日本も米国が充てにならないことから防衛力の増強に乗り出しましたが、トランプ大統領になっていつ見捨てられるか分からなくなったことから更に強化することになります。そのため株式市場では三菱重工、川崎重工、IHIなどの軍事産業銘柄の株価が高騰しています。軍需産業はすそ野が広いことから多くのメーカーの業績に好影響が出ると考えられます。しかし日本の製造業は東アジアのビリ(中国、韓国、台湾、日本の順)であり、日本こそ製造業の抜本的強化策を実施する必要があります。かって世界1の製造業の国だった日本が東アジアでビリ、世界全体でも真ん中程度の製造業になったのは、税収不足を大学生の授業料を上げて(大学生に課税して)補おうとしたためです。1975年の国立大学授業料は年間3万6,000円でしたが、その後1,2年周期で値上げし、2005年には535,000円まで上がりました。1990年以降日本人の所得は上がっていませんが、授業料は339,600円から520,800円まで上がっています。これは明らかに税収不足を補うためのものであることが分かります。この際政府自民党は受益者負担という考え方を持ち出しましたが、この考え方には国立大学、とりわけ理工系は国の産業インフラであるという認識が欠けています。欧州大陸の国(スランス、ドイツ、オーストリアなど)ではこの考え方に基づき国立大学授業料がほぼ無料となっています。歴史の古い欧州各国の産業競争力が落ちない原因はここにあります。製造強国を目指す中国は理工系の優秀な研究者を世界中から招聘するとともに国内の大学でも理工系学部の授業料を安くする(年間10万円台)と共に企業が奨学金を出し(授業料を負担)理工系研究者や技術者の育成に努めています。アジアNO1の工業国になった韓国の大学授業料は国立で20万台円、私立で30万円台です。同じく躍進著しい台湾も韓国と同じレベルです。日本は1人当たりGDPでも韓国、台湾に抜かれているのにこれらの倍近い授業料を学生に課しているのですから、学生の経済負担が重いことは明らかです。その結果アルバイトに明け暮れる学生が多く、大学で理工系の基礎を養成できなくなっています。そのため大学では高専からの3年次編入者を増やし、質の低下をごまかしています。
ここを何とかしない限り日本の製造業の復活はありません。国立大学の無償化にかかる費用は約3千億円(授業料相当分)ですが、理工系だけ無償化すれば2千億円程度で済みます。文系は講義が主であることから通信(インターネット)教育で十分ですし、たくさんのレポートを義務付ければ通学生より遥かに実力が付きます。また通信学部を東大と京大におき、卒業証書はこの両校の名前で出せば、学歴社会の解消にも役立ちます。また文系の優秀な人材が理工系に移る、文系分野の仕事にも理系的思考力が生かせるメリットもあります。財源は医療費45兆円から捻出します(慢性疾患の薬を薬局で貰えるようにすれば1~2兆円浮く)。
それでは私立との格差が大き過ぎるという人がいますが、国立大学理工系は国の産業インフラ確保のための教育機関(私立は個人のための教育機関)であると考えれば理解できると思われます