トランプ狂乱で中国が世界の中心に
2025年4月2日米国のトランプ大統領が相互関税を発表してから世界が大混乱に陥っています。高関税を課せられた国の反応は、報復関税を課す国と静観する国に分かれています。いち早く同率の報復関税を決めたのはカナダで、中国が続きました。EUも続くようです。中国の報復関税の発表に対してトランプ大統領は「中国はパニックに陥り、間違った対応をした。中国はこうしたことは絶対に避けるべきだった!」と自身のSNSに投稿したようですが、意味が分かりません。自身が相互関税と言っているのですから、高関税を課された相手国が同額の関税を課してくるのは想定済みと思われましたが、どうもそうではないようです。この反応を見ると、トランプ大統領は早期の交渉での解決を狙っているのかも知れません。米国は多くの消費財や生産財を輸入していますから、高関税を課せば米国内の物価が上がり国民の不満が高まります。確かに国内生産は盛んとなるでしょうが、それが効果が出るのは少なくとも2年後です。かつ米国内の生産コストは高いので物価が下がることはないと思われます。そうなると2年後の中間選挙で共和党は惨敗しますから、なるべき早く成果を出す必要があります。今後半年から1年の間に各国と交渉して各国が米国がターゲットとする関税を下げる形で、米国も今回課した高関税を撤廃すると思われます。
問題は今回の後遺症です。今回トランプ大統領は多くの国が米国への輸出で稼いでいることを逆手にとって高関税で揺さぶりを掛けましたが、同時に軍事力でも揺さぶりをかけています。ウクライナには軍事支援をしないと脅しをかけ、勝手にロシアと停戦交渉を始めましたし、国内資源をよこせと言っています。同時にNATO諸国にも軍事費を5%まで上げるよう要求しています。この結果ウクライナは米国への依存を減らし英国やフランスとの結びつきを強めています。同時にNATO諸国は米国製戦闘機購入の見直しにも着手しました。この結果NATOが米国離れを起こし、将来米国と並ぶ軍事力を持つようになることが予想されます。
同時にこれまで米国を中心に包囲網を敷いていた中国への対応が違ってきます。これまでは米国が西側諸国のリーダーとして振る舞ったため、中国が悪者になっていましたが、今の状態は中国より米国が悪者です。こうなると中国に対する各国のアプローチが大きく変わってきます。中国は軍事的には余り各国の脅威になっておらず、経済的な脅威になっています。これは安値で輸出するからであり、中国が市場を閉ざしているわけではありません。中国の所得が上がったことからベトナムやラオスなどの所得が低い国から中国への輸出は増えており、中国は輸出先としても魅力を増やしています。ここで中国が政策的に輸入を増やせば、高関税よる米国向けの輸出の減少を吸収することが可能となります。そうなればそういう国は米国よりも中国に靡くようになります。
日本もこれからは米国一極依存ではなく中国との二極体制に移行すべきだと思われます。日本の場合、米国依存が強すぎるため常に中国とは距離を置いてきましたが、米国一極依存は安全保障上も経済上も危険なことが分かったことから、等距離外交に舵を切る必要があると思われます。安全保障上は米国が充てにならない、即ち日米安全保障条約はいざとなったら実効性を発揮しない(米軍は後方支援に徹する、今のウクライナ状態)ことは自明のことであり、独自防衛力を持った独立国家を目指す必要があります。経済上も中国は米国と並ぶ市場であることを再認識し、しっかりした足場を築く必要があります。それと同時にインドや東南アジアを開拓し、米国の割合を下げる必要があります。この考え方は西側諸国に共通していると思われ、この結果中国の見直しが進み、中国が米国に代わり世界経済の中心になると思われます。