日米関税交渉の着地点は日米相互防衛条約の締結
トランプ大統領(トランプ)の高関税政策で世界が揺れています。トランプは1月に大統領就任してから2月1日にカナダとメキシコからの輸入品へ25%の追加関税(実施は3月4日)、中国からの輸入品に2月4日から10%の追加関税、3月4日からは更に25%追加関税、3月12日には全ての国からの鉄鋼、アルミニウム関連輸入品に25%の関税、4月3日からは全ての国からの自動車に25%の追加関税を課しました。さらに4月5日からは全ての貿易相手国に一律10%の基本関税を課し、4月9日からは約60か国に対して個別に税率を決めて実施しました。これによって日本は24%の関税を課されることとなりましたが、同日実施を90日間停止すると発表しました。原因は米国債が売られ、国債金利が上昇したからと言われています。これに対する各国の反応は分かれています。3月5日に35%の関税を課されることとなった中国は34%の報復関税を実施、これに対してトランプは104%に引き上げ、これに対して中国は84%に引き上げ、これに対してトランプは145%に引き上げ、中国は125%に引き上げとエスカレートしています。トランプに対してこれだけ正面から戦えるのは中国だけであり、世界中で中国の強さが見直されていると思われます。
一方日本はと言うと相変わらず情けない対応です。石破首相は4月9日まで終始トランプに適用除外を求めると言う非現実的なことを言っていました。4月9日に日本にも24%の関税が課されることが発表されると早速報復関税はしないと表明し、交渉を申し入れました。米国としても交渉による早期の決着は望むところであり、米国フレディ財務長官、日本赤沢経済再生担当大臣間で交渉が始まることとなりました。今週にも赤沢大臣が訪米するようですが、米国側は日本の輸入車に対する非関税障壁の撤廃と農産物の輸入拡大を求めてくると言われています。日本から米国への自動車の輸出額は約6兆円であるのに対し、米国車の輸入は殆どありません。この原因は日本車メーカーが米国人の好みに合う車を作っているのに対し、米国車メーカーは日本人向けにカスタマイズしないことにあることは明らかなのですが、日本で米国車が売れないような仕組み(非関税障壁)を作っているのも事実です。その最大のものは軽自動車の規格で、特に税金を優遇している点は言い逃れできません。さらに完成車検査が日本でも過剰な規制であると問題になっています。完成車検査については撤廃すればよいのですが、軽の規格については簡単に行きそうにありません。ただし軽自動車の価格が上がっており、税金の優遇は撤廃することも考えられます。ガソリン税の暫定税率撤廃を穴埋めする財源としても考えられます。
農産物についてはコメの関税が焦点となりそうです。日本は77万トンのコメを無税で輸入していますが、これは政府が管理し消費者は買えないようです。消費者が買える輸入米には1kg341円の関税(5kg袋で1,705円)が掛かっており、結果米国からの輸入米は国産米とそう変わらなくなっています。現在コメの値段が高騰して5kg袋で4,200円を超えており、米国がコメの関税を問題にするのはタイムリーと言えます。以前なら国内自給体制の維持ということで消費者を説得できましたが、今は物価高騰の中での主食の高騰であり、この理屈で消費者を納得させるのは難しくなっています。この問題では日本の多くの消費者がトランプを応援していると思われます。その結果コメの関税は下げざるを得ないと思われますが、米国にとってコメより金額的に魅力がある農産物の輸入を増やすことで妥協が成立する可能性があります。
このように日本との交渉は米国にとってあまり攻め手がないのが実体ですが、1つだけ米国が大きな果実を得ることができる分野があります。それは安全保障の分野です。これについては4月10日トランプが「我々は彼らを守るために何千億ドルも払う。他国のためなら、全額を米国が負担する。日本は何も支払わない。もし米国が攻撃されても、日本は我々を守るために何もする必要がない」と述べたことからも分かります。これは誰が考えてもその通りであり、トランプの主張の中で唯一世界の理解を得られる内容です。GDP世界3位の国の安全を同1位の国が全面的に守る条約など荒唐無稽と言えます。事実日本が侵略されたときこの条約に基づき米国が日本を守ると考えている日本人は皆無だと思われます。それはウクライナ戦争で確信になっています。実際日本も鋭意独自防衛力の強化を進めており、現在の日米安全保障条約の終焉または無効化を見据えています。ならば双方の本音に基づき条約を改定することが米国に大きな経済的利益を、日本には大きな変革をもたらすことになります。この場合日米安全保障条約が日米相互防衛条約に格上げされることになると考えられますが、この結果駐留米軍の多くが撤退することになる(有事だけ飛来)ので、米軍の負担は大きく減少します。日本は戦後続いた米国支配から脱却し、新しい時代を切り開くことができます。幸い日米相互防衛条約への格上げは石破首相の唯一の持論のようなのでトランプとの直接交渉で合意可能です。従って日米関税交渉の着地点は意外にも日米相互防衛条約ということになります。